『THE TOÉ』白倉あや 26歳経営者の突き抜ける思考術

『THE TOÉ』白倉あや 26歳経営者の突き抜ける思考術

turning point25歳までに判断材料を決める…若手経営者の転機とは 

――先ほど21歳で起業したというお話でしたが、それはどういった経緯だったのでしょう?

二十歳の頃に海外移住をして、就活をするタイミングで日本に帰ってきたんですが、そのときにオーディションを受けてみないかと相談をされて、運よくグランプリを取り芸能界に入るという展開になりまして。それで芸能活動を一年くらいしていたことがあるんです。それと同時に、スターバックスでもずっとアルバイトをしていたんですけど、その写真が話題になりインスタのフォロワーが2,000人くらいから一気に10万人まで増えました。

――え、そんなに!?

芸能の仕事は向いていなかったのですぐに引退し、そのタイミングでたまたま企業さんからお声をかけてもらって、アパレルで共同経営で始めたのが最初ですね。

「芸能界は自分で動かせる変数が少ない。確実に地に足をつけて生きる手段を選びたいと考えました」

実は起業した時点では、自分の人生の方向性を決めるのに判断材料が不十分だなという認識があったので、まだ将来どんな道に進むかは決めないでおこうと思っていたんです。25歳までに判断できる準備をして、25歳になったらそのときの感覚で一番やりたいことをやる、というのを二十歳の頃から決めていました。それでKeiちゃんとの出会いもあり、ファッションの道に進もうと決めましたね。

――では、『THE TOÉ』をやるきっかけになる、海外で事業をやりたいという気持ちが芽生えたのは?

これは高校時代に遡りますが、凄くインターナショナルな学校だったんです。担任の先生がアメリカ人でクラスメイトも半数以上は外国籍。それで当時ロシア人の友達と高校2年生の時に英語のスピーチコンテストで優勝したことがきっかけで、政府がやっている海外派遣事業の日本代表に抜擢されたんです。そのプログラムで海外10カ国くらいを回り、明るい話題から深刻な話題まで勉強して、それから漠然と国際的な仕事がしたいなと思っていました。

――じゃあこれまでに転機になった出来事をあげるとしたら。

高校2年生のときに海外事業に参加したことと、二十歳のときの海外移住、そしてKeiちゃんとの出会いの3つが大きいですね。

work style人生を良い方向に進めるためのに大事な「恐怖心」

――最近では起業したいと考える女性も多いと思いますが、白倉さん自身、起業するためにはどのようなことが重要だと思いますか?

今の時代、自分に「やりたいこと」があるならすぐにトライできるツールや環境がたくさん存在しています。情報も簡単に手に入るし、ひと昔前に比べたら「やるか、やらないか」だけといっても過言でない。でもその一歩を踏み込むことがなかなか難しいですよね。しかもこれだけのものが揃っていると、それらを少しずつ試しているだけでは、世の中で全く目立たない。多くの人が同じような条件下にいるので、他の人たちと差別化することは大変なんです。「ここだ!」と思ったときに大胆な一歩を踏み込めなければ、その他大勢から突き抜けることは難しくて。

その意味では、大胆に行動しなければ何をするにも難しい時代ともいえます。むしろ情報やツールが溢れかえっている今こそ、「ここぞ」と思った時に踏み込める「行動力」が重要だと思うんです。

――でも行動する勇気が出ないという人も多いと思います。

たしかに大変なことですよね。それに「ここぞ」という時がわからないこともあります。そんな時こそ私は、恐怖に怯える自分をいつも想像します。直感よりも、恐怖心を感じるタイミングで自分がいろいろな角度から考えた末にたどり着いた行動で、人生が変わると思っています。

例えば今のブランドを始める前、『MAVIMOON』というブランドをしていたんですけど、売上も消化率も好調で、自分も楽しく、チームにも恵まれていて、一切仕事に対しての不満はなかったんですよ。だからこそKeiちゃんと出会ったとき、新しい世界をもっと見てみたいという強烈な好奇心と、今の順風満帆な仕事環境を手放すことへの恐怖心が共存していました。このとき『THE TOÉ』の立ち上げを決断したことは、ただ直感に従ってのことではないと感じています。むしろ、それまでに試行錯誤を重ね、実際の現場での経験や観察をしっかり行った上での決断だったと思います。怖くなったり不安になったりするからこそ、いろいろな状況を想定して、慎重に足元を固めることができる。だからこそ、大胆な一歩も踏み込むことができる。結局は、臆病な人間の方が、結果的にやりたいことを全部やれるチャンスが増えていくと思っています。

――目標に近づくために、習慣にしていることはありますか?

目的地から現在地の確認と想像力を持つことです。仕事をしていると毎日忙しく、自分が今何を達成したくて何が必要で何をしなくてはいけないかがわからなくなってくるときがあります。自分が理想とする姿に対し、“いつかそうなれたらいい”と思い描くだけでは、一生そこには到達できません。理想から逆算し、アクションを決める。そうすることで自ずと日々実践すべきことが見えてくるのかなと思っています。

ビジネスって気がつくと自分たちが優先すべき事項に目がいきがちですよね。そうではなく、相手は自分に対して何を求めているか、ここを冷静に見極めることが重要だと思っています。どれだけ想像力を働かせられるかだと思うんです。服を見過ぎると、自分ってどういう服が着たいっけ、どういう服が欲しかったっけ、とわからなくなってしまうこともあるので、自分の中の“可愛い”“着たい”の定義や判断軸がブレないように、日々海外の雑誌やSNSもくまなく見るようにしていますね。

「本質的にファッションはカルチャーだと思っています。オランダの歴史学者が、“遊びは文化より先にある”と言ったように、ファッションも売れる洋服を作っても、自分たちが楽しまなきゃ意味がない。自分がワクワクする、楽しいと思える、環境を意識的に作っていきたいです」

――白倉さんのお仕事スタイルについてお伺いしたいのですが、今の拠点は日本ですか? 海外ですか?

一年の半分は海外で半分は日本です。日本の工場さんとやりとりしているので、日本にいないとできない仕事もあって。でも月に一回は海外に行って、打ち合わせをしたり、インスタグラムやweb用の写真をコンセプトに合わせて撮影しています。

――例えば、会社員みたいに何時から何時まで仕事をする、というような決まったスケジュールはあるのでしょうか?

ルーティンはなくて、服のサンプルが上がったタイミングでメーカーさんにチェックしに行ったり、急な需要にあわせて生産の用意をしたりと流動的ですね。どの商品が話題になるかを想定しながら行動計画を作ることもあるので、SNSの時間、クリエイティブを作る時間、スタイリングを組む時間は意識的にスケジュールに入れています。今はインフルエンサーブランドが増えているので、どうやったら自分たちのブランドを目に留めていただけるかを考えながら。自己満足だけじゃ絶対に終わらせたくないので。ビジネスとして、ブランドとしてどうやったら突き抜けられるのかというのは常に考えているんです。『THE TOÉ』を自分たちにとっても、お客様にとっても特別な存在にしていきたいです。

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