目次 [閉じる]
futureお客様の正解が正解。どこまでこだわりをもってできるか
――旅行やいろいろな手配をする上で、情報はどうやって収集して、どうやってストックしているんですか?
インターネットで検索して出てくるような情報というのは、マスに向けた総合評価です。例えば、「高級 リンゴ」で検索をしたら、本当にこだわり抜かれた質の良いリンゴではなく、コスパやいろんな事情、SEOを加味したものが出てきてしまう。私たちのお客様向けのベストなクオリティの品はほぼ出てこない。
そうするとどのように情報を得るのかというと、私たちと同じような海外の富裕層向けの旅行会社や、現地のトップクラスのホテルのGM(支配人)のような方々からの意見や現場の意見を集めたり、私のような海外の旅好きな方との情報交換をしたり、または実際足を運んで情報を集めています。
――情報って生ものじゃないですか。お客様にあわせたものを提案したり、ほかの社員と共有したりというのは、どのように運用しているんですか?
一応データ化していますが、難しい部分ですね。完全にはデータ化できないですし、できないから似たような会社がないのだと思います。それに情報は常に更新されてしまいますしね。
例えばホテルで言えば、どんどん新しいところがオープンしますし、新しい施設の情報や口コミは検索では出てこない。それにトップ5くらいまでのホテルだと、質の高さはほぼ変わらず、旬や好みの世界になります。どの提案がベストなのか、そのお客様のパーソナライズを認識して、好みに沿った提案をすることが私たちの仕事です。
――仕事をする上でのこだわりや譲れないことはありますか?
お客様の立場になるっていうことですね。言葉に出すと簡単そうですが、とても難しいです。私たちの正解が正解ではなくて、お客様の正解が正解なので。例えば花束の依頼ひとつとっても、私達が良いと思うものが正解ではありません。お客様が大切な方にこの花束を渡して、その方が喜ぶ姿を見て、お客様に喜んでもらうことが正解。予算が5万円と言われていても、1万円追加したらお客様の満足度がすごくあがって、お客様の大切な方がすごく喜ぶとしたら、それはもう正解であり、提案すべきなんですね。そういう思考回路がとても必要。自分にも会社のメンバーにも、どれだけお客様の立場に立てているか、それを重要視しています。それを考えられないのであれば、その依頼はもう私たちじゃなくていいんですよ。
あと大切にしているのは、それが限界かっていうことですね。例えば「来週パリに行くのでこの三ツ星レストランの予約をとってほしい」と言われたときに、とれませんでした、終わり、っていうのは普通の仕事。じゃあ毎日電話をかけてみたか? 私達の全ての人脈を使って試したか? ディナーと言われたけどランチはどうなのか? できることを全部やりましたかっていうこと。自分の恋人や親にアレンジする旅行だったら? 自分の記念日だったら? 自分だったらもっと執念深く考えるのに、もし考えていないならそれはホスピタリティが低い。
私達にとっては毎日の仕事の一つでもお客様にとっては365分の1の大切な1日です。もうこれは執念と執着の世界だから、担当者のホスピタリティ次第ですよね。かといって他のお客様を大きく待たせてしまうのだったら、それは正解ではなかったりするので。本当に一人一人の思考を働かせる必要があるので大変な仕事だなと感じています。
――今後の理想や目標はありますか?
ラグジュアリートラベル業界のナンバー1になりたいですね。
――今もライバルはいなさそうですが。
私自身が旅オタクなので、その自信はありますが、まだ認知が大きくあるわけではないです。ありがたいことに一部の方には認知いただき、会員審査もお待ちいただいていますが、大手旅行代理店のラグジュアリートラベル部門やカードデスク、そういうところにもお客様はまだ分散していると思っています。ただラグジュアリートラベルに特化した点では、私たちのほうが知識もセンスもあるという自信があります。もっともっといろんな旅や、遊び、楽しみ方があるという事を伝えられる、影響力がある立場になれたらいいなって思っています。
――最後に、日々大切にしている考え方を教えてください。
「努力は夢中に勝てない」っていう言葉が好きです。努力ってしたほうが自分にとって絶対に得なんですよね。ゴロゴロしていても、生きているだけで同じような体力を使う。でもその努力って残念ながら報われない事が多い。なぜならみんなが成功したくて、みんながある程度努力しているからです。だから人よりも必死であり、夢中である必要があるし、夢中になれることを探すべきだと思います。
人の後悔って多くが「動かなかった後悔」だと思うんです。あの時挑戦しなかったなとか、あの時踏みださなかったなとか、動かなかったという事実、または中途半端な行動に対してなんですよね。「一生懸命行動してやりきった」っていうことを後悔っていう人ってあんまり見たことなくて。それはそこまでやりきった努力には必ず何か残っているからだと思います。
そうやって必死で頑張っている時って、もう努力でなく夢中なのだと思います。自分の中に目標があるから、そもそも努力と感じていないことも多い。そして夢中になるくらい努力したことは必ず自分の糧になっている。長い年月をかけても、必ず何かの形で報われると思います。誰に何を言われたって、どんなに時間がかかっても、夢中で楽しんでいる人には誰も勝てないんです。
――先ほど話にあった、仕事に楽しさを見いだせるかどうかに通じることですね。
他の人が「何それ」っていうことをやっていても、本人がものすごく楽しんでやっていたらもう勝てないんですよ。だから夢中になることや好きなことを見つけたら、必死にやるべき。それは自分のためでもあると思います。絶対にいつか自分に返ってきますからね。
実際にお会いしたかぐみさんはとても気さくな女性でした! 「努力はしたほうが絶対に得」という言葉も、モチベーションが下がった時に思い出したい言葉ですね。