仕事も家庭も意志を持って貪欲に ポジウィル岡千尋の働き方

仕事も家庭も意志を持って貪欲に ポジウィル岡千尋の働き方

ポジウィル株式会社の創業メンバーであり、現在は執行役員をつとめる岡千尋(おか ちひろ)さんにインタビュー。取材時はなんと妊娠34週目で、産休は取らず自分なりのペースで働く予定だそう。多くの人のキャリアと向き合ってきた岡さんが考える、人生において「働く」ことの意味とは?

【岡千尋プロフィール】
年齢:33歳/職業:ポジウィル株式会社執行役員/家族構成:パートナーあり、妊娠中(取材時)
Twitter @bln49980

topicsただいま妊娠34週目!

――岡さんのこれまでの職歴を教えてください。

1社目は銀行員をやっていまして。そのあとはリクルートに入って、ブライダルのベンチャーに行って、今のポジウィル株式会社になりますね。職種は基本的に営業。ポジウィルも最初は既存事業の現場から入って、今はいろいろな新規事業の立ち上げをやっています。

――ポジウィルさんでいう現場っていうのはどういう場になるんでしょう?

弊社では、キャリアコーチングといって、キャリアで悩む人に対して対話を通じて自己理解を促したり、これまでの経験を一緒に整理しながらキャリアの方向性を見つけていくという事業をやっております。そこでの支援事業がメインとなっています。

いわゆる年功序列・終身雇用といった「いい大学に進学して、一社の会社に勤めあげる」以外の選択肢が増えたことで、なんとなくこのままでいいのかとか、これから自分はどんな選択が最適なんだろうって悩む人が増えています。カウンセリングを通じてキャリア設計まで一緒に考えて、必要によっては転職活動のサポートや、副業や独立をする場合のアドバイスをすることもあります。

転職サイトとは違い、ポジウィルは企業からではなく、個人の方から料金をいただくサービス。一人ひとりのキャリアにおける課題がわかる診断ツールや理論に基づいたプログラムワーク、動画、面談やチャットサポートなどがパッケージ化されていて、「転職なのか、現職に残るべきかなど。そもそも自分らしさを発揮できる仕事や環境がわからず、その判断軸を作りたいという方が利用者層としては多いです」

――ポジウィルさんがキャリアコーチングを始めた4年前に、ほかにこういうサービスをやっている会社はあったんですか?

ありませんでした。当時は個人がキャリア相談にお金を払うっていう概念や仕組みそのものがまずなくて。弊社のプログラムは最低でも40万円(4年前で10万円程からスタート)くらいするのですが、キャリアや自己啓発のために個人がそんな高いお金を払って相談する意味がわからないってすごく言われてきました。4年かけて徐々に根付いてきて、やっぱりニーズがあったことが少しずつ証明できているのが今です。

 

turning point一見無難な経歴、本当はコンプレックスだった

――キャリアに関する仕事をするきっかけになった出来事は?

最初の就職は安定してそうだし親も喜んでくれるだろうし、と思って銀行に入ったのですが、合っていなくて。だからといって特にやりたいこともないまま転職活動を始めてみたんですが、リーマンショックの影響もありうまくいかない。とにかく自信のない時期に、受からないだろうという気持ちで行ったのがリクルートの面接でした。この面接が自分にとっては原体験になりました。

――どんな面接だったんですか?

就活とか転職活動って、どちらかというと自分を良く見せて採用してもらうっていうイメージがあったんですけど、面接のときに出会った人は少し違って。

私の家庭は親が厳しくて、勉強を頑張りなさい、という育て方をされたんですが、受験で親の期待に応えられなかったのが結構コンプレックスで。それなりにいい学校を出てそれなりの就職もしているから一見無難に見えがちなのですが、自分としては「もっとやれたはずなのに」という悔しい気持ちがずっとどこかにありましたし、またそれを人に見せることは「ダメなこと、自分にとって不利なこと」だと思っていて、人前でさらけ出せませんでした。ただその面接官の方はうまくそれを私に吐き出させてくれて、そしてその挫折体験の裏側にあるような悔しさや悲しさなどのドロっとした感情に人間らしさがあって魅力なんだ、と伝えてくれました。

自分がダメだと思っていた経験や自分すらも受け入れてもらえた時に、心のそこから「私はもっとやれるかもしれない!」とパワーがみなぎってきて、そこから自分でも驚くほどにパワフルに仕事をこなしていくようになりました。

「この面接でこれまでの自分に対する捉え方が変わり、そこからキャリアの考え方や人生観も変わったと思います。こういう体験をいろいろな人にしてほしい!という気持ちがこれまで事業に携わる上で私を突き動かしてきたものです。また『自分はここから変わるんだ』と、銀行という安定した環境を敢えて捨てた覚悟も大きかったと思います」by岡さん

――じゃあリクルートに入ってからはそんなに苦労することもなく?

最初の2年ぐらいは狂気的に、めちゃくちゃ頑張るみたいな状態。ただ2、3年目くらいのときに、いよいよ会社の期待に応えるだけではしんどくなっていて。親の期待に応える、から、会社の期待に応える、にすり変わっただけだったんですよね。ある日突然、それだけでは頑張れなくなってしまった。いわゆる燃え尽き症候群。自分にとってはそれが20代で経験したひとつの壁でした。

――そこからどうやって立ち直ったんですか?

仕事にしか居場所を求めてなかったところが反省点でした。順調なときはいいけど、仕事で行き詰ると途端に人生が総崩れするような気持ちを経験したので、仕事以外にもちゃんと自分の居場所をもっておかなきゃいけないんだなって思いました。これは今でも大事にしている考えです。

キャリアの理論で私が好きな4Lという理論があります。人生においては「愛(Love)」「仕事(Labor)」「余暇(Leisure)」「学習(Learning)」のバランスが大事というもの。当時の私はたぶん仕事が9割、いや10割。仕事がうまくいかなかったら全部崩壊してしまうので、分散させる必要がありました。なのであえて早く帰る日を作ってヨガに行ったり、当時お付き合いしていた彼と結婚したり。仕事以外にも居場所を作ることを教訓としてやるようにしたかなと思います。

 

work style自由度が高くて仕事もラクで楽しい、そんなおいしい話はない

――4社経験して、それぞれどんな働き方をしてましたか?

銀行はまさにカッチリしていて、9時に出社して19時で帰るみたいな働き方。良くも悪くも女性に残業させない風土みたいなものがあって、今思えばそれがちょっと物足りなかったんですよね。もうちょっと頑張れるはずなのにって悶々としていて。それもあってリクルートではワーカホリックに働いていました。年齢も学歴も男女の差もなく実績重視の環境だったので。

ただ当時のリクルートもコロナ前だったのでオフィスに絶対に行かなきゃいけなかった。これから結婚したり子ども産むってなったら、20代はいいかもしれないけど、30代はこんなに時間も場所も制約がある状況で成果も出しながら働くのはきついなと思うようになりました。なので、そのあと選んだベンチャー企業からは、当時は珍しいリモート勤務もOK、時間もフルフレックスという働き方に移行しました。今もリモート、フルフレックスなので、出産のようなライフイベントを迎えても、自分の体調のペースにあわせて働けています。

――自由度が高くて良い環境ですね。でもぶっちゃけ、ポジウィルもスタートアップな環境下なので働きまくっている人っていたりします…?

まわりから見ると私はたぶんそう見えていると思います(笑)。でもそれは、私自身が納得しているからいいのであって。ひとつ言えることは、働くことが嫌なのであれば、逆にこういう環境には行かないほうがいい気がしています。というのもフルフレックス・リモート可っていうのは、自由になれて仕事がラクになるという魔法みたいな話ではないんですよね。裁量が増えるということはそれだけ求められる責任も増えるということ。それを理解していないと大きなギャップになるのではないかと思っています。私自身ひとつ前の転職のときに、「ラクになれると思っていたけど、全然そんなことない!」と感じたこともありました。

今思うとそんなおいしい話はないんですよね。自由と裁量がほしいのであれば、それだけ求められるものも責任も増える。それを理解した上で自分の人生をカスタマイズしていくという覚悟は必要だと思います。

岡さんにとっての下積み時代は?「銀行のときは暑い日も寒い日も個人宅にピンポン営業。リクルートのときも毎日電話100件かけるなどのドブ板営業をやって。それを大阪というシビアな街で経験できたのは、すごくよかったかなと思います」

――今こうしてキャリアに関わる仕事をされていますが、自分自身のキャリアを意識し始めたのはどのくらいの時期でしたか?

リクルートに入ってからでしょうか。銀行の頃はどちらかというと、福利厚生や時短勤務など、会社がなにを与えてくれるのかを重視していました。リクルートに入社してからは携わっていた領域的にも世の中でどういった人材が求められるのか客観視しやすい環境だったため、自分で主体的にキャリアを築く必要性に気づけました。それがおおよそ24歳くらいの頃だと思います。

――キャリアを築こうとしたときに、どんなことから始めました?

最初に自分の強みを見つけよう、というのがよくある流れだと思うのですが、その前になんとなく自分に自信が持てないとか、過去に引っかかっている体験がある人はまずそこから向き合った方がいいと思っています。自分に自信が持てない状態で強みを探そうとしても、自信がないから前に進めないし、そもそも見つけられないということも、相談者の方々の中ではよくいらっしゃいます。

私の場合、親の期待に応えられなかった受験の失敗という経験がこれに該当したと思うのですが、リクルートの面接を経て清算できた。こういった経験を一つひとつおろそかにせず向き合い清算して、自分は何があっても大丈夫だと思える心の土台を作ってから、自分の得意やいいところに目を向けて、それを活かせる環境や仕事を掴みに行ったほうがいいですね。

――自分を活かせるものを見つけたら、次はどうすれば?

何がなんでも結果を出すことに集中するのが良いと思います。うまくいったらもっとこうしたい、ここを目指したいという欲がどんどん生まれてきて、それが結果的にやりたいことにつながっていくんじゃないかなと思っています。

 

life style家族が幸せかどうかがその人の根本だと思う

――産休を取らないということだったんですけど、今(※取材時)も毎日仕事しているんですか?

基本的には毎日働いています。最初の2、3か月くらいは私もつわりが大変で。でも普通の会社であれば考えられないくらい融通を利かせてもらったんですね。気持ち悪い、だるいっていうときに休ませてもらったり、だいぶまわりの協力があって。だからこそ安定期に入ってからは、動けるうちにちゃんと価値を返しておこうと思っています。産後何がどうなるかわからないとも思っているので、今のうちにまわりの人のために頑張っておこうっていう感じですね。

――産休を取らないということに、不安はないですか?

逆に何もしないほうが余計なこと考えるなと思っていて。無事生まれるかなとか陣痛痛いのかなとか。マタニティブルーになったりすることもなかったのは、仕事に分散できていたからかなと思います。

――産後もお仕事をセーブしたいということもなく。

できることならやりたいって思っていますし、そう思えている状況にあることがありがたいなと思いますね。助産師さんと、どういう出産と産後にしたいかというバースプランを考えているのですが、なるべく早く仕事に復帰したいので、できるだけ体に負担のない状態で産みたいと話しています。

――岡さんは離婚して今回再婚して、出産。もともと結婚や出産の願望はあったのでしょうか?

そうですね。離婚する人って二度と結婚しないか、もう一度結婚したいかに分かれると思っていて。私は後者で、離婚した次の日にはもう結婚したかったんですよ。家族を持ちたかったんですね。仕事もめちゃくちゃ大事なんですけど、同じくらい家庭もめちゃくちゃ大事。だから、家族と過ごすなんでもない時間が私にとっては幸せですね。

――5年後や10年後どうしたいという具体的なイメージはありますか?

流れによって変わることもあると思うので、大枠こういう感じだったらいいなというイメージは常に考えていますね。私はこれまでキャリア(仕事)の領域をメインでやってきたのですが、その中でもやっぱり私は家族や家庭の在り方に、ものすごく興味関心があって。私自身、結婚して離婚して再婚していて、それも人生の転機になっていますし、また幼少期にどういう家庭状態で過ごすかがその人の根本的な価値観やパーソナリティに関わると思っています。ですから今後は、家族やパートナーシップ、育児に関する事業に携わっていきたいと思います。

――お話を聞いていると、岡さんは人と人が関わっているところに面白みを見出しているというか、関心があるんだろうなという印象。

まさにそうだと思います。人に興味があるんだと思います。

――では最後に、日々大切にしている考え方を教えてください。

「貪欲であること」。限界を決めないとか、自分で自分のブレーキをかけないっていうのは大事にしているかもしれないですね。

――ここでいう貪欲は、上昇志向というよりもやりたい気持ちを止めないっていう。

そうですね。銀行員までの自分は、自分がこうしたいということよりも、親はこう言っているし世間的にはこれを選んでおけばいいかな、というように、自分がやりたいという気持ちを縮こめていた感じがあって。自分がやりたいことをちゃんと発信したり実現していったりしたほうが生きやすくなったので、そういう状態でいることは今後も大事にしたいなと思っています。

 

6月22日に岡さんは無事出産。お疲れ様でした♪ 出産や育児を通して感じたことも、またお伺いしてみたいですね。

■ポジウィル株式会社
https://www.posiwill.co.jp/

 

 

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