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turning pointゴールだけを目指す働き方から、過程を楽しむ働き方へ
――喜多尾さん自身のビジネスの基礎になっているのはどんなことでしょうか。
一つ目の会社を起業した時、自分でとにかくなんでもやってみた経験は勉強になりましたね。当時は並行して芸能の仕事もしていて、いつオーディションや仕事が入るかわからなかったので、自分がいなくても回るように全部仕組み化していたんです。ぴんぴんきらりの起業をしたときも芸能の仕事が忙しかった時期だったので、最初から自分がいなくても回る仕事の仕方を意識していました。
――仕組み化する上で大事にしていることはありますか?
人に任せる仕事と自分がやるべき仕事を分けること、使える時間の中で集中して仕事に取り組むことです。私のやるべき仕事を精査した結果「人とお金を集めること、集めたリソースをどこに投資するかを決めること、会社やサービスのブランディング、組織づくり」に集約されたので、それ以外のことはどんどん人を採用して任せていくようにしています。
もうひとつ仕事で意識しているのが、常に「あさっての仕事をする」ということ。今日絶対にやらなきゃいけないことをなるべく減らして、トラブルや緊急事態があったときにも対応が遅れないようにしています。
――転機になった出来事をあげるとしたら、どんな出来事でしょうか。
具体的な転機があったわけではなく、少しずつ積み重ねて今があるイメージです。ただ、価値観が変わった出来事はあります。芸能活動をしていたときに、ある有名なクイズ番組に出た時のことです。実は、その番組に出ることはあまり気が進んでいませんでした。間違えたらどうしようというプレッシャーもありましたし、もともとモデルになりたいという思いで芸能を始めたので、視聴率の高いテレビ番組に出て有名になりたいとは思っていなかったんです。でも芸能の友達はすごく出たがっていたので悔しがっていた時に、自分はこの仕事をずっと続けていきたいと思っているんだろうかと

「ぴんぴんきらりが軌道に乗ってからは、収録日も土日にしてもらったり、相当わがままを聞いてもらっていましたが、番組作りにはいろんな人やお金がかかっているので、申し訳ない気持ちが強くなって。事業を優先したい気持ちも強くなり引退を決意しました」
20代は遊びや恋愛を犠牲にして、芸能の夢にストイックに向き合ってきました。ただ歯を食いしばって山を登るみたいな状態で、大きい仕事だと失敗しないかと緊張したり、お仕事の過程そのものを楽しめていない自分にも気が付きました。過程でも楽しめるような生き方をしないと、明日死んだら後悔すると思ったんです。そこから芸能の仕事との向き合い方も変え、ぴんぴんきらりを起業するきっかけになりました。難しいことや課題はまだまだありますが、今は仲間と一緒にゴールを目指しているこの過程自体がすごく楽しくて。いつ死んでもいいなと思える仕事の仕方ができているので、あのときの迷いは転機だったと思います。