目次 [閉じる]
turning point「できること」にフォーカスしてキャリアを作る
――笹尾さんにとって、仕事の原点になっている経験はありますか?
やはり入社4年目のときに支店長を経験したことが、一番苦しかったし楽しかったし、自分のキャリアに向き合った一年だったなと思います。部下が5人いて、ひとつの店舗の経営を任されていたんですね。そのとき、私の下に早稲田大学卒業の女の子が配属になったんですけど、知的でロジカルで、笑顔とコミュニケーションで仕事をするような私とは全然違うタイプ。そういったタイプの違う子のマネジメントはすごく大変でしたね。最後には彼女から「最初の上司が私で良かった」と言っていただけたので、難しいなりにもしっかりと向き合えたのではないかと思います。ほかにも店舗の経営の数字を見たり、いろいろなトラブルを経験しましたが、今こうして40代半ばになって体力が衰えてきても動けているのは、20代の頃に働き尽くした礎があったからかなと思います。
――仕事をする上でのこだわりがあれば教えてください。
私が今人事の立場だということもありますが、できることにフォーカスするということはすごく大事にしています。マネジメントする立場なので、メンバーの得意を伸ばしてあげて、出る杭を伸ばすみたいなことは、気を付けていますね。
弊社が使用している人事ツールでの性格分布図では人の性格は4種類に分類されるのですが、一般的な営業の会社は同じようなタイプの人材が揃っていることが多いのに対し、うちの場合は満遍なくいろんな種類の社員がいます。面接のときにも、ひとつでも自分にとっては「すごいな」と思うところが見つかれば、前向きに検討するようにしています。華やかな経歴はいらなくて、私たちの営業ではお客さんにどれだけ寄り添って話を聞いてあげられるかということが大切なので。ガツガツいける営業マンより、しっかり話を聞ける人のほうが大事ですね。

不動産業はどんなところに面白みを感じますか?「ひとつとして同じものがないところ。お客様のライフスタイルを聞かないと提案もできないですし、一人の方の人生に深く入り込めるのがすごく魅力的だと思います」
――ルミリーの読者の方は、20代後半から30代の女性が多いのですが、その世代のキャリアに悩む女性に何かアドバイスをするとしたら?
一つ目は自分のキャリアの棚卸をすること。女の人って、「自分は何もできない」と思っている人がすごく多いなと思うんです。でも、趣味も含めて全部棚卸してみると、できることは実はいっぱいあるんです。また、個人的には20代の時期にフルでキャリアを作ることにフォーカスしたほうが、その後のキャリアは作りやすいなと思います。ワークライフバランスと言いますが、現時点ではなく、生涯で考えるのも大事。女性の場合生涯で見ると働きづらい時期って絶対にあります。子育てとか介護とかそうなったときのために、働けるときにキャリアを積むのは大事。
マネジメントの経験がひとつでもあると、結婚や出産をしたあとにも幅が広がると感じます。あとは資格とか自分を語れるものが一つでもあると強いですね。例えば私だとHSKという中国語の一番上の検定を取るとか宅建を取るとか、そういうものがあると説得力も違うし、仕事の中で努力してくれる人だというのが伝わるので、自己研鑽大事です。
ただ一つだけ言いたいのは、私は不妊治療が結構大変でした。「20代のうちにキャリアを」と言っておきながらも、自分のライフプランをしっかり考えておくのも忘れないでほしい。私は若い頃働き過ぎて生理が止まってしまい、それが不妊症にもつながったりしたので、自分の体の声を聞くということもやっていただけたら。少しでも子どもがほしいと思うのであれば、出産も自分のキャリアプランの中に組み込んでおいたほうがいいと思いますね。