台湾の漢方文化を日本へ。女性に「気持ちいい」瞬間を届ける DAYLILY共同創業者・CEO、小林百絵

台湾の漢方文化を日本へ。女性に「気持ちいい」瞬間を届ける DAYLILY共同創業者・CEO、小林百絵

turning point「気持ちいい」ブランド作りにこだわり…経営の難しさとの葛藤

――小林さんのビジネスの基礎を作ったのはどのような経験でしょうか。

大学生のときにコンセプトデザインを勉強して、大学院でデザインシンキングという分野の研究をしていたのが、自分にとっては大きな影響があったと感じます。どちらもブランドや商品を作るときに、どういうプロセスで作っていくか、どういうふうにしてアイディアを生み出していくかを体系的に学ぶ学問です。

「体系的に学ぶ」と聞くと理屈で考えると思われがちですが、当時の先生には頭でこねくり回して何かを生み出すことよりも、自分の欲求や感覚にとことん素直になることで、気持ちいいと思えるものを追求していく大切さを教えてもらいました。今DAYLILYというブランドをやる中で、コンセプトや商品デザインを見て「気持ちいいな」と思ってほしいというのは、最初からずっと思っていることですね。

もともとは何かを作ることが好きで美大への進学を検討していた小林さん。ただ親からも「もっと幅広く学べたほうがいいのでは」と助言を受け、慶應義塾大学へ。結果的に、ブランドの概念やコンセプトを作る楽しさに出会えたそう。

――仕事においてこだわっているのは、どんなことですか?

先ほども話しましたが、「気持ちいい」ということは私にとってはすごく大事なことです。商品やブランドを作るときはもちろん、人間関係も気持ちいい方を選んでいきたいと思っています。違和感を感じながら何かを進めると後々大きな問題になることもよくあったので、自分だけじゃなくて周りにとっても無理がないか、持続可能かというところも含めて、気持ちがいい状態を作れるようにしていますね。気持ちいい状況は変わり続けていくものなので、「気持ちいい状態かどうか」を選択基準にすることを、自分自身のルールにしています。

だからこそ、自分たちで実際に起業をしてみて、やればやるほど、自分は一生経営者らしくなれないと思いますし、向いていないとすら感じるんです。漢方でブランドを作りたいという思いから始めたので、自分たちが本当に作りたいものを作るためには起業せざるを得なかった。でも、会社になると数字も追わないといけないし、会社を続けていくためにしなくてはならいたくさんのことがあって、それが得意なわけでもない。だから、経営者と言われてもピンとこないんです。ブランドの運営と会社経営は一体ではあるものの、どうしても自分の中では結び付きません。だから「自分は経営者なのだろうか」と自問自答することもあります。

――例えば、ご自身はブランド運営に専念し、経営は別の人に任せるという可能性はあるのでしょうか。

可能性としてはなくはないと思うのですが、結局、ブランドは日々の小さな意思決定の積み重ねでできていくものなので、そこの手綱を握っておくためには経営者でいる必要があると考えています。広告代理店では自分たちが本当に作りたいものを作る決定権がないから起業しているので、自分たちの会社で主要メンバーとしてやっていくことが、作りたいものを作れる環境だと思うので。

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