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turning pointアナウンス力を新たな方法で活かす「広報アナウンサー」
――トークナビ創業の経緯を教えてください。
私はもともと青森放送と名古屋のテレビ局でアナウンサーを経験して、28歳で個人事業主のフリーアナウンサーになったんです。それまでは会社員で毎月のお給料があったのに、フリーになったら月給が家賃を下回る6万円ということもありました。40歳になってもこの暮らしをしていたらどうしようと思って、改めて事務所を探したり一般職でも仕事を探したのですが、アナウンサーのセカンドキャリアをつくれる場所が見つからなかったので、「じゃあ自分で作っちゃおう」という感じで始めました。
――そのときに不安はなかったですか?
当時はリスクとは感じていませんでした。周りのアナウンサー仲間たちもみんなセカンドキャリアに悩んでいたので、自分の会社を作ればその人たちも働けるんじゃないかとも考えていて。
――いざ会社を作るにあたって、事業の内容はどの程度決まっていましたか?
会社名である「トークナビ」はトークをナビゲーションするという意味なのですが、自分たちのアナウンサー経験を生かして、話すことが苦手な人をナビゲーションする会社というものを思い描いていて。話すことが苦手な人たちは方法を知らないだけなので、アナウンサーが講師になってお教えする事業を始めようと考えていました。
そこでまずは「アナウンサーになる旅」というタイトルがついた講座を開きました。ネットで集客をかけて、アナウンサーという職業についてお伝えしつつ、こうすれば話し方が身につきますよという講座です。最初は6人くらいの方がいらっしゃったのですが、ニーズがあるということを知って、「研修事業ができる」と思いました。営業マンや人事担当者など自分がアナウンサー時代には出会ったことがない職業の方々に来ていただいたことで、視野も広がりましたね。
――最初は研修事業から始まったんですね。先ほど話に出ていた、「女子アナ広報室」はいつから始まったのでしょうか?
2019年8月です。研修事業をやっていると、人気やリピート率の高い講師に偏りが出てきました。そこで、みんなを活躍させるにはどうしたらいいんだろうと思って面談を繰り返しました。すると話すスキルや指導スキルより、企画するスキルが高いアナウンサーもいることがわかったんです。そこから聞く力を活用して企業のプレスリリースを書いたり、会社をどう魅力的に見せるかの企画を作るというような、広報業務を任せてみることにしました。先ほどもお伝えしましたが、地方局のアナウンサーは企画を作る人も多いので、その力を広報に活かしたんです。こうして「広報アナウンサー」という新しい仕事が誕生しました。
この「女子アナ広報室」の誕生はかなり大きな転機になったと思います。というのも、フリーアナウンサーは単発仕事が当たり前の業界なのですが、「女子アナ広報室」では企業を長期間支援するため、毎月固定で仕事がある状態が作れるんです。それって業界的には画期的で。毎月安定した収入があって、アナウンサーの仕事も続けることが実現できるようになりました。アナウンサー同士が一緒に働くことができるようになったというのも大きなメリットです。
――というと?
フリーアナウンサーの仕事は直行直帰だったり、現場に自分一人で行くことが当たり前。会社員の頃はディレクターからフィードバックをもらったり、相談できる相手もいたんですけど、個人事業主になると自分のことは自分でするのが当たり前になるので、周りからの助言が少なく成長が止まるんです。それが女子アナ広報室が出来たことでチームで働く体制が出来上がり、成功体験やノウハウを共有する相手が出てくる。「あの人うまいな」と感じて勉強したりアドバイスを求めることができるので、全員の力の底上げができるようになりました。