化粧品ブランド『éloge(エロージュ)』のCEOをつとめる橘香緒里(たちばな かおり)さんは、自身のアトピー肌を改善した経験から美容の世界へ。その一方で20歳の若さで出産を経験し、現在14歳になる息子の育児にも奔走してきました。常に前を向いて走り続ける橘さんにインタビュー!
【橘香緒里プロフィール】
年齢:34歳/職業:éloge CEO/家族構成:息子あり
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topics数字を追うことが全てではない。独立の道へ
――橘さんは普段は愛知県にお住まいだそうですね。出身は岩手県だとか。
18歳のときに結婚を決意して、そのときに愛知に来ました。そこからずっと愛知にいます。
――結婚が早いんですね。その後20歳で出産も経験して。
そうですね。自分の両親が早くに離婚していたり、父親に育てられたりと、若い頃にいろいろなことを経験していたので、早く自立したいという気持ちが強かったんです。あったかい家族にも憧れていました。
――さらに22歳で個人エステサロンを開業。
もともと出産前もエステサロンに勤務していたんですが、出産後は子どもをしっかり育てることを優先したくて、個人で始めました。
ただ、いずれは自分のサロンを大きくしていきたい、この業界で成功したいという野望が強くて、1年後に大手化粧品メーカーの代理店として方向転換。ノウハウはもちろんですが、たくさんの人と関わることでいろんな悩みや価値観に触れたりして、学びが多かった期間ですね。代理店時代は7年半トップの成績で頑張っていました。
――それほど優秀な成績だったら、その道でキャリアアップという選択肢もあったのでは?
たしかにはじめは、1位になったことで自分も誰かの役に立てる、価値があると思えて嬉しかったんです。でも、だんだんと売上や店舗数など数字を追うようになって…。私は人がキレイになっていく姿を見るのが嬉しいし、キレイになることでその人が喜んでくれるのが嬉しい。シンプルにそこが原点。良い成績をおさめることだけが私が求める幸せではないと感じ、29歳で辞めるという決断をしました。20代の経験を活かして30代はゼロからやっていこうと思って。
――では30代からはどんなことを始めたんでしょうか。
想いをモノにのせて全国に届けようと思い、今メインでやっているéloge(エロージュ)という化粧品ブランドを立ち上げるため、30歳で会社を設立しました。現在は肌質改善のエステサロン部門とあわせて2社の代表をしています。
turning point経営者になり夕方家で息子を迎えられるように
――橘さんにとって転機になった出来事はなんですか?
子どもを産んだことはとても大きいです。それまでの私は「自分ひとりで生きていけるし」みたいな一匹オオカミなところもあったんですけど、子どもを育てながら働くには本当にいろんな人の力を借りなければ働けないですし、ひとつの物事には目に映らないところでいろんな人が関わっているっていうことに気付けた。小さな幸せにも感謝できるようになりましたね。
――育児もあり仕事もあり20代は怒涛ですね。振り返ってみていかがですか?
そのときはあまりそういう実感はなかったんですよね。確かに振り返ってみると、本当に朝から晩まで、日曜日とかも関係なく働いてました。子どもとの時間も正直全然とらなかった。でも、とにかく毎日ご飯は必ず作るようにしていました。
――どうやってその時間を捻出していたんですか?
朝5時には起きて、全部を朝やっていました。夕方以降家事をしないって決めていたので、朝に夜ご飯まで作っちゃう。掃除も朝やっていましたね。
――その習慣は今も続けているんですか?
自分で会社を経営するようになってからは変わりましたね。ご飯はもちろん作りますけど、今は働く時間は自由に決められるので、以前ほど早起きして朝に全部詰め込むということはしなくなりました。
――それは自分で意図して変えたのでしょうか。
そうですね、変えましたね。打ち合わせなどはある程度日中に終えられるようにしています。今は夕方息子が帰ってくる時間に家にいて、息子を迎えられることが幸せなんです。
成功されている経営者の方って、心が満たされてる人が多いと思うんです、余裕があるというか。会社も家庭も、うまくいっていて愛がある。私自身が、会社がうまくいってても心が満たされていないように見えてしまう経営者の方にあまり魅力を感じなくて。お金だけを追う会社経営じゃなくて、人としての成長があったり心も満たされる会社経営をしたいという思いがあります。だから私にとっては家族との時間もとても大切ですね。
work style大事なのは自分も周りも「楽しい」を選択できること
――起業したときに一番不安だったことは?
あまりないんですよね。起業する方でお金のことが心配という方も多いと思うんですけど、私はあまり心配してなかったです。起業したときにそれほどお金に余裕があったわけでもないんですけど、大きく利益を出したいという発想ではなかったので。
――最低限回っていけばという?
そうです。これまでも一個製品を出して、それで出た利益で次の製品を作るっていうことを繰り返して会社を大きくしてきました。その中で何かがヒットしてくれたりしたら嬉しいなとは思いますけど、そのためにもコツコツ積み上げることが大事だと思っています。せっかく波が来ても、土台がなくてそのあと落ちたら本末転倒なので。
――仕事をする上でのこだわりはありますか?
ワクワクを選択する、楽しいほうを選択するっていうことですね。
化粧品作りのことでいったら、「私はこの製品を一生使いたいと思えるか」で製品化するかどうかを決めてます。だから新商品を作るのにもすごく時間がかかっちゃうんですけど。
――今も何か試作中のものはあるんでしょうか?
毎回6品くらいは同時進行で作りながら、うまくいったものを製品化するっていう感じで動いてます。納得できなくて諦めることも多いですね。
――仕事で満足感を感じるのはどんなときですか?
イベントやポップアップを開催したときにお客さんがたくさん来てくれるのも嬉しいですが、お客さんが喜んでるのを見てスタッフが喜んでるとか、スタッフが輝いているのを見るとやりがいを感じますね。さっきも言ったように、私は日々「楽しい」を選択して生きているので、一番身近にいるスタッフたちが「楽しい」と感じてくれるのがわかると、やっていて良かったなと思います。
――これから先、40代以降の自分はどんなふうに働いていると思いますか?
もっと貢献できるようになりたいですね。人の成長に携われるようになりたいというか。私と関わってくれたからには貢献したいなといつも思っていて。例えばスタッフにもここで働けてよかったなと思ってもらいたいし、自己成長してもらいたいです。
今は会社もまだまだだと思っているので、会社の成長のためにやらなきゃいけないことはたくさんあるんですけど、élogeが独り歩きするようになったら、例えば自分のブランドを作りたい人やもっと美容業界で輝きたい人の手助けをしていきたい。今まで美容業界にしかいなかったので、私にできるのはそういうところかなと思っています。
life styleすべては自分次第。息子にも絶対できる
――先ほど「業界で成功したいという野望があった」とおっしゃっていましたが、具体的なステップはどのように考えていましたか?
目標設定みたいなものが苦手で、個人的にはあまり考えてなくて。逆に、そのときの自分の状態を一番大事にしてますね。20代の頃、無理に働いてしまったことが原因でいきなり耳が聞こえなくなったりとか、起きたら声が出なくなったりする経験があって。そうなるとせっかく積み上げてきたものが台無しになってしまう。無理にやってもいい結果が生まれないっていうのはそのときにわかりました。
――毎日のルーティンはありますか?
朝15分くらいですけど、絶対に自分の時間をとるっていうことですね。その時間に本を読んで、自分のスケジューリングをして。子どもが朝ご飯を食べる時間に、向かい合ってそれをやると決めています。それと夜は湯船にしっかりつかる。一日一回汗をかいて、デトックスをするようにしています。
――息子さんは今14歳。接し方で気を付けていることはありますか?
彼には彼の人生があるので、自分で選択して人生を歩んでいってほしいと思っているんですけど。これからの人生で選択するタイミングが来たときに「お母さんはめちゃくちゃ仕事してたけどかっこよかったな」って思ってもらえるように、背中を見せたいと思っています。
子どもから見ると私って、めっちゃ楽しそうに見えてると思うんです。実際に「なんでお母さんはそんなに楽しそうなの?」って言われる。でも、楽しいほうがいいじゃないですか。楽しく働いて、楽しく生きてるのを見せたいし、そういうのって自分次第でなんとでもなるってことを伝えたいんです。
――そう思うのは橘さん自身の経験も踏まえてなのでしょうか。
そうだと思いますね。コンプレックスだらけだったし、もともと裕福だったかというとそういうわけでもないですし。ゼロからスタートして今がある。自分の選択でここまで来ました。私も全然特別な人ではないので、誰にでも想いと行動次第でできることだと思うんです。だから息子にも絶対できると伝えたいですね。
――では最後に、日々大切にしている考え方を教えてください。
やっぱり、「楽しいを選択すること」。何か相談された時も「あなたが楽しい方はどっち?」と聞いたりします。それが一番かな。
――最近特に楽しかったことはありましたか?
1月に名古屋で初めてélogeのポップアップがあったんですけど、それですね。百貨店さんのほうからも、過去一番の売上と言っていただいたほどで、私たちの想像を超える多くのお客さんにお越しいただくことができました。
愛知県に住み始めたときはこの地に特別愛情があったわけではなかったんですけど、こうしてたくさんのお客さんに来てただいて、地道にやってきたことが伝わったんだなと感じたんですよ。それと同時に反省もして。日々感謝してもっとこの地に貢献できるように動こうと思いました。でも、今まで頑張ってやってきてよかったなと思ったのが、そのポップアップでしたね。
5月に開催されたビューティーワールドジャパンも盛況で、今後は海外展開も視野に入れているそう。芯の強い素敵な女性でした!
■éloge公式サイト
https://eloge.official.ec/