ロールモデルのない世界で営業マンから叩き上げで代表へ INEST株式会社代表・小泉まり

ロールモデルのない世界で営業マンから叩き上げで代表へ INEST株式会社代表・小泉まり

work style「明日潰れるかもしれない」大反対された会社に入社

――代表の立場になってみて、心境の変化はありましたか?

私はもともと社長になりたいとか、立場をあげたいというモチベーションがあったわけではなくて、自分や周りが感動する仕事をしたいと思って働いてきました。だから社長になったばかりの頃は、周りに「すごい」と言われても、「そんな器じゃないのに」と感じることも多かったんです。でも社長になってみて、自分の行動で環境を変えていけることがすごく良い経験となって、仕事がさらに面白くなったと感じます。悩みも大変なことも増えていきますが、より自分自身に向き合えるようになって、成長できた気がしますね。

また、代表という肩書をもって社外に出ていくようになると、自分のひとつひとつの言動の影響力を嫌でも考えるようになりました。自分のことは何でもバランスよくできるタイプの人間ではないと思っているので、常に周りの人に助けてもらっているのですが、「最後に意思決定をするのは私なんだ」という自覚が、会社の規模やフェーズによってどんどん強くなってきました。

――転機になった出来事を挙げるとしたら、どんな出来事でしょうか?

二十歳で短大を卒業するときに、前身の会社への就職を選んだことです。実は当時就職活動をしてそれなりに良い企業から内定をもらっていたのですが、いつ潰れてもおかしくない状況だったこの会社を選びました。周りには全反対されましたが、「もし明日会社が潰れるとしたらどうしよう」と考えたときに、「この人たちともう一度チャレンジしたい」と思える環境で頑張りたいと思ったんです。この時選択を誤っていたら今の私は絶対にいないので、周りの反対を押し切ってでもその決断ができた自分を褒めてあげたいです。

当時会社の口座には6,000円しかないということも…。「会社が潰れると思って必死で働きました。大変すぎてもう戻りたくはないですが(笑)、もう無理かもしれないという局面を何度も乗り越えてきて、絶対にできるという自信を持たせてくれた、大きな糧になった経験です」

最初は小さくてお金も人脈もない会社でしたが、どうにか会社を大きくして当時反対した人たちに認めてもらいたいと思っていました。なので、会社が上場したときはものすごい感動と達成感がありましたね。

――大変なことを乗り越えるために、どのようなモチベーションで臨んでいましたか?

私はキャリアも絶対に諦めたくないし、でも子どもを産んだり女性としての幸せも掴みたいと思っていたのですが、今ほど働く女性の情報が多くなかったので、お手本がないことがずっと苦しかったんですね。だから実際に子どもを妊娠したときも、上場企業の中で役職者として仕事と家庭をどうやってバランスをとったらいいのかとか、相談できる同性がいなくて手探りで進んできました。そういう心細い経験があったので、これからの女性には同じような思いをしてほしくない、誰かのロールモデルになれたらいいなという思いが自分を支えていました。折れそうになるときに、その気持ちを持って頑張っていましたね。

1 2 3

ranking