子育て世帯の新しいインフラを目指して 株式会社iiba代表・逢澤奈菜

子育て世帯の新しいインフラを目指して 株式会社iiba代表・逢澤奈菜

turning point闘病経験と出産で「自分に何ができるか」

――起業前の経歴を教えてください。

新卒でブライダルの営業をして、その後リクルートでも営業をしていて、営業畑の会社員でした。

――では、もともとプログラミングの仕事などをされていたわけではなく?

大学が情報メディア学科だったので多少の知識はありましたが、アプリを作ったりできるほどではなくて。iibaのサービスを作りたいと思い立ち、どうやって作ろうかを考えたり調べたりしている中で、ノーコードで作ってみたらいいんじゃないかと教えてもらって、自分で作り始めてリリースしました。

――サービスを思いついたのはまだ会社に所属していた時だったとか。

ちょうど育休中にソファーで子どもに授乳しているときに思いついたサービスです。2021年ごろにサービスを考え始めて、そこからサービスの内容を妄想して、アプリを作ってという準備期間が1年ほどありました。その間に一度復職もしています。

ちょうどその準備期間中に、東京都のビジネスコンテストに応募して、1,000人の応募者の中からファイナリストの10人に選ばれたんですね。会社を登記することで100万円の支援が受けられるという内容だったので、登記はそのタイミングでした。

――まだお子さんも小さくて、子育てと起業準備のやりくりはどのようにされていたのでしょう。

そうですね、起業したのは子どもが1歳と3歳のときなので、まだ小さいですね。よく「大変だったんじゃない?」と聞かれますが、私の場合は仕事をしているほうがバランスが取れるタイプなんです。育児って誰からも褒められないし、成果も見えづらいし、お給料もないし。本来育児はすごく社会に対して価値のあることなんですが、すごく長期的でありまさに無償の愛なので。私は日々達成感を感じられる仕事があったほうが、バランスを取りながら育児できて、私にはちょうどいいと思っています。

「もちろん体力的には大変なときも。寝かしつけと同時に自分も寝落ちすることもよくあります。そこから起き上がって夜中に仕事をしたりするんですけど、最初は椅子に座れているだけでOK、みたいなところからスタートしました」

――転機になった出来事を挙げるとしたら、どんなことでしょうか。

ひとつは、子どもを産んだことかなと思っていて。それによって見え方が変わったというのは感じます。

――見え方というのは、自分からの社会の見え方?

そうですね。それまでは自分本位に生きてきたと思うんですが、子どもが生まれてからは、「この子が大きくなったときに社会はどうなるんだろう」とか「社会のために自分は何がしたいだろう」と考えたり、より良い社会になってほしいという思いから政治にも興味を持ち、選挙にも行かなければと思うようになりました。

それと転機としてはもうひとつ、二十歳のときに大きい病気をしたことで人生観が変わりました。病気を経験して、いつ死ぬかわからないからやりたいことはすぐにやろうとか、迷っているうちに人生は終わっちゃうからすぐに始めようという思いが強くなりました。治るかもわからないほどの大病だったので、命をもらったんだから社会に貢献しなきゃという感覚も生まれましたね。それと家族の大切さ。いろんな人の死を目の当たりにしながら、最後に残るのは家族だと感じたので、家族に関わる事業をやっていきたいという思いが芽生えたのもそのあたりに理由があると思います。

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