4つの顔をもつ高田桃衣 仕事の鍵は“循環”と“人の縁”

4つの顔をもつ高田桃衣 仕事の鍵は“循環”と“人の縁”

副業が解禁され、最近では自由な働き方をする人が増えています。今回は4つの仕事を掛け持ちしてキャリアを築いている、“パラレルワーカー”の高田桃衣(たかだ ももい)さんにインタビュー。複数の仕事をすることのメリットや、気を付けるポイントなどをお伺いしました。

【高田桃衣プロフィール】
32歳/職業:パラレルワーカー(企業広報、フリーアナウンサー、話し方講師、マーケティング支援)/家族構成:夫
instagram @tkdmmi(高田 桃衣)

topicsコロナで仕事が激減! 4つの肩書きで働くパラレルワーカーへ

――いろんなお仕事をされている高田さん。どういうふうにお仕事が増えていったのか教えてください。

キャリアのスタートは、はとバスのイメージガールです。パンフレットモデルやイベントMCなどを中心としたPR活動をしている中で、伝える楽しさや奥深さを実感してアナウンサーの道に進みました。事務所に所属しながら競輪専門チャンネルのキャスターや地域情報番組のレポーター、企業VPのナビゲーターなどアナウンサー一本で約5年活動していましたね。ロケでのレポートが好きで一人でも多くの方に現地の魅力を私の言葉、表現、しぐさで伝えたいというミッションを持ちながらやっていました。自分のコーナーを持たせていただいたりもして、アナウンサーとしてある程度、自分のミッションに沿ったやりたいことを実現できていましたね。

アナウンサー時代の高田桃衣さん。

アナウンサー時代の高田さん。

そんなときにコロナ禍になり、オーディションやイベントの仕事なども中止になって仕事が激減してしまいました。それで一旦自分のこれまでのキャリアを見つめ直しながらこれから何をしたいのか、何ができるのかを考えました。今後のことを見据えたときに、企業広報は伝えるという部分でアナウンサーに親和性があり、自分の経験を活かせる職種だと思って、広報として会社に就職しました。

――その後アナウンサーの仕事は?

最初は会社員としての生活リズムをつかむのが難しくて、半年くらい様子を見てから復帰しました。フリーだと毎回現場が違うことも多く、長丁場の現場もありますが2~3時間のお仕事がメインでした。対して会社員だと朝の9~18時、週5日が基本なので、それに慣れるのが結構大変でしたね。

――話し方講師やマーケティング支援のほうのお仕事は?

広報が平日なのでフリーアナウンサーの仕事は土日に入れています。お仕事があるときとないときがあるので、そこで何か自分のスキルを保てるようなことができないかなと思って話し方講師を始めました。マーケティング支援はアナウンサー時代からのご縁で、温浴施設の会員数の動きやトレンドのリサーチのお手伝いをしています。これは広報の仕事にも役立ってますね。

 

turning point19時まで会社員、20時から話し方講師、土日はアナウンサー!

――高田さんにとって下積み時代はいつでしたか?

はとバスですかね。いろんな人の目にさらされることで様々な意見をいただきました。メンタル的にも強くなりましたね。あとはフリーアナウンサー1、2年目。はじめてレギュラーをとれたのが、競輪専門チャンネルの専属キャスターだったんですけど、7時間生中継を経験して。体力的にもしんどかったし、公営競技なのでより正確な情報をお伝えすることはもちろん、ミスが許されない部分もあったのですごく神経も使いました。でも得られたものも大きく、何にも代えがたい経験だったと思います。

当時はフリーでやっていたので、収入や代打への影響を考えると体調が悪くても仕事に穴をあけられないという意識は常にありました。高熱を出しながら、地方ロケで満面の笑みを作って食レポしたこともありましたね。

――フリーならではの苦労ですね。その中で転機になったことはありましたか?

やはりコロナが一番大きかったです。

――その頃仕事はアナウンサーだけですもんね。

そうなんですよ。仕事がこの先継続的にちゃんと来るのか、先が見えなくて。自分のキャリアに対してすごく不安を感じたんですよね。なので、今の何か仕事がある、いただけている状況はすごくありがたいです。

EmiriaWizのワンピースを着用し、ほほ笑む高田桃衣さん。

高田さんはこの日、愛沢えみりさんのブランドEmiriaWizのお洋服を着用。「アナウンサー時代にいろんな女性起業家の方に会う機会が多く、そういう憧れの方たちの存在がモチベーションになっています。愛沢さんも憧れの女性の一人」

――それぞれのお仕事は、どういうスケジュールになっているんですか?

予定がぎっしり詰まっている平日は、朝7~8時でマーケティング支援の仕事をして、9~19時くらいまで広報の仕事。そこから話し方教室に向かって20~22時過ぎくらいまで講師をやってますね。家に帰ってからも依頼いただいたナレーションを録ったり。そんな感じで仕事をしています。

――そして会社が休みの土日はアナウンサー。

そうです。話し方講師やマーケティング支援の仕事は土日もしています。

――ずっと働き詰めではないですか…?

そうなんですよ(笑)。最初は仕事仕事で精神的にも根詰めてしまって、果たしてこれは私が幸せと思えるワークライフバランスなのかなって思ったときに、もう少し休むことも学ばなきゃなって。それで今は意識的に、1ヵ月に1度休みの日を作ったり、週に1回18時以降の予定を入れない日を作ったりしています。

 

work style仕事の循環を意識して相乗効果をあげる

――今は会社員が軸にあると思うんですけど、先々独立していきたいという志向はありますか?

今はこの生活に慣れてきて働きやすい環境にはなっているんですけど、パラレルワークという働き方は大切にしつつ、ゆくゆくは活動の場をもっと広げられたらなと思っています。もともと会社員という働き方をしていなかったので、絶対に会社員でいたいというこだわりはありません。

――会社員の良い面、悪い面、どんなところに感じます?

会社に所属していることで、さまざまな貴重な経験ができ、学ぶ機会も多くあります。また、パラレルワーカーとしての働き方を尊重してもらえることには、とても感謝しています。一方で、時間の使い方には工夫が必要な場面もあります。フレックスタイム制度があるので、うまく活用しながら、自分なりに効率化を意識して取り組んでいます。

4つの仕事のそれぞれの面白みを語る高田桃衣さん。

複数ある仕事で一番好きなのは?「アナウンサーの仕事はほかでは味わえない達成感があります。最近は広報とマーケティングにも面白さを感じているので、スキルアップして実績を積んでいきたいですね」

――高田さんがお仕事をしていく上で気を付けていることはありますか?

一番気を付けていることは、それぞれの仕事で学んだことをほかの仕事で活かすっていう循環を大切にしています。

――というと?

例えば会社でプレゼンすることがある時は、アナウンサーの経験を活かした話し方や言葉遣いで聞きやすいプレゼンを意識しています。また、そうした実体験を話し方教室にも活かしているんです。プレゼンで悩む社会人の生徒は多いので経験が役に立っています。

――循環を意識することで、実際に仕事って増えました?

そうですね。広報を通して知り合った方からナレーションの依頼をいただいたりとアナウンサーのお仕事につながったりしています。すごく人の縁って大事だなって、パラレルワークをしてみて改めて感じました。

――でも人の縁って難しいですよね。どうやってつなげていったらいいんでしょう。

無理やり人脈を作るとかじゃなくて、複業の基盤を作ったことで自然と出会える場は広くなったので、一回一回出会った人たちとの関係を大切にしています。

――高田さんのような働き方をしたい人は増えてきていると思いますが、そういう人にアドバイスするとしたら?

複業といっても、お金が欲しくてなどやむを得ずその働き方になっている人も結構いると思うんですけど、その中でも絶対得られるスキルはあると思うので、吸収できる部分を自分のものにしてほしいです。これからパラレルワークをしてみたいと悩んでる人に対しては、パラレルワークや副業を許容してくれる環境はあるので、何か軸を作りつつ、やりたいことは我慢せずに挑戦してみることをおすすめします。少しでもイメージした働き方に近づけたらその先の未来がどんどん広がっていく気がします。

カメラに微笑む高田桃衣さん。

現在のお仕事のほかにみそソムリエの資格も持っているそう。利き味噌ができるそうです♪「味噌っていろんな効能がある日本人のソウルフード。私の家系に室町時代からの味噌や醤油の蔵元があって、そのルーツもあることからもっと味噌の魅力をいろんな方に広めたいなと。広報やアナウンサーの仕事にも役立つんじゃないかと思っています。」

――始めたばかりのときって、やっぱりしんどいですよね…?

本音を言うとものすごくしんどかったです(笑)。なんで私こんなに働いてるんだろうって。

――なぜ諦めずに頑張れたんでしょう?

理想像に近づくために、自分がそう決めたからやり遂げるしかないなって思っています。それにしんどいのには何か原因があるからだと思ったので、時間軸で行動するなどタイムパフォーマンスを向上できるような工夫をしました。バランスを保つことができたら、一本で仕事をしている時よりもワクワクするし心地がいいです。あとは好きなことだから「もっとこういうことをしてみたい」というひらめきも生まれるので活力がわいてきます。なので、パラレルワーク自体は全く苦ではないですね。嫌々やってることならどこかで限界がきてしまうと思います。

 

life style絶えず変化を求め進歩する

――好きなことを仕事にしているとはいえ、コロナなど試練も多かったと思います。嫌になってしまうことはなかったですか?

20代の頃はお金がついてこなかったりとか、空回りしたり思うようなパフォーマンスを出せなくて、好きなことを仕事にしているはずなのに嫌になりそうになったりもしました。それで落ち込む時期もあったんですけど、今はその頻度が減ったかもしれないですね。そういう意味では精神的にもだいぶ安定してきたのかもしれないです、30代になって。

――なんで安定したんだと思いますか?

物事を俯瞰できるようになってきたんですかね。

――それはいつ頃からでしょうか。

会社員になってからです。フリーランスのときは自分が商品でオーディションなどでもまわりに勝って生き残っていかなきゃいけないっていう尖りがあったのかもしれないですね。それが会社員になって、チームワークの大切さを知ったり、話し方講師になって成長の手助けをする経験をしたり。ナンバーワンよりオンリーワンの働き方を目指したことで一段階大人になれたのかなっていうのはありますね。

――もっとアナウンサーとして前に出たいっていう気持ちは?

今はなくて。それよりももっと話し方講師としていろんな人に「話すことって楽しいんだよ」「人とのコミュニケーションって大事なんだよ」っていうことを伝えたりとか、広報として企業をさらにプッシュしたりとか、悩んでいる人や経営をサポートするための力を磨いて実践と実績を積み上げたいと考えています。

――ちなみに普段これだけ働いていて、夫さんから「もっと家にいてほしい」と言われたりすることはありませんか?

私の働き方を尊重してくれていますね。家事も分担していますが、夫の方の分量が多いかも(笑)。

――この先子どもが出来る可能性もあると思いますが、そうなったらこの働き方はどうしますか?

今はまだ子どもがいないので子育ての大変さはなかなかイメージができませんが、この働き方を続けたいと思っています。もっと在宅の割合が増えるとは思うんですけど、仕事が好きだから、何かを諦めるんじゃなくてどう両立できるのか、何がベストなのかっていうところを考えていきたいですね。

――最後に、日々大切にしている考え方を教えてください。

エジソンの「絶えず変化を求める気持ちと不満こそが、進歩するために最初に必要となるものである」という言葉を大切にしています。コロナ禍でドン底に落ちてから、働き方を変えて、抱えていた不安をプラスにかえることができたと思っています。アナウンサー一本のままでも違う変化の形はあったかもしれませんが、当時の選択を後悔していません。今後も環境の変化に負けず、先を見つめながら進歩をしていきたいと考えています。

 

副業・複業が注目されている今、参考になる部分も多かったのでは? 仕事の循環をするというのはこれからの時代ますます必要になってきそうなポイントですね!

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