家は買う方がいい?借りる方がいい?働く女性のライフスタイル別「家」の選び方

家は買う方がいい?借りる方がいい?働く女性のライフスタイル別「家」の選び方

住宅ローン減税や低金利に後押しされて、家を購入する人が増えています。しかし家の購入にはいろいろ不安がつきまといますよね。一生のうちでも大きな買い物ということもあり、勇気がいりますよね。

そこで今回は、ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんにお話を伺い、単身女性・子どものいない夫婦・子どものいる夫婦と3つのタイプにわけて、それぞれが家を買うメリットやデメリットについて紹介します。さらに家を買うのに適したタイミングや家を買う時に気を付けたいことなどについても、高山さんに教えていただきました。ぜひ参考にしてください。

【高山一恵さんプロフィール】

(株)Money&You取締役/ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。一般社団法人不動産投資コンサルティング協会理事。慶應義塾大学卒業。月400万PV超の女性向けWebメディア『Mocha(モカ)』やチャンネル登録者1万人超のYouTube「Money&YouTV」を運営。著書は『11歳から親子で考えるお金の教科書』(日経BP)、『マンガと図解 定年前後のお金の教科書』(宝島社)、『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版) 『はじめてのお金の基本』(成美堂出版)などで、累計150万部超。

家を買うのと借りるのとでは、どっちがお得なの?

結論から言えば、家を買う場合も借りる場合も、トータルでかかる金額はほとんど差がないことが多いです。
よく「長い目で見ると、家を借りるより買った方がお得」などと言われますよね。しかし家を買うには頭金も固定資産税もかかりますし、いくら金利が低い時代とはいえローンを組めば金利がかかります。また賃貸の場合はずっと家賃を払い続けることになり、途中で更新料がかかりますし、場合によっては家賃が値上げされることもあります。

そのため、家の購入を検討する際にお金について考えることも大事ですが、「理想の分譲マンションが見つかった」「家を買うことで、子どもに資産を残したい」「セキュリティが万全な分譲マンションに住みたい」といったような、「お得かどうか」以外の要素も考慮しながら、「家を買うか借りるか」決めた方が、のちのち後悔しない可能性が高いでしょう。またライフスタイルや置かれた状況によっても、「家を買った方がいいか借りた方がいいか」は異なります。

ライフスタイル別・家を買うメリットとデメリットは?

単身女性が家を買う場合

【メリット】

最近は単身女性が家を購入するケースも増えていますが、そういった女性たちに購入した理由を聞くと「今後一人で生きていくかもしれない、となった時にずっと住める家を確保しておきたかったから」と答えることは多いものです。そして高齢の単身者だと家を借りにくい、という現状がありますし、高齢で家を借りられたとしても、思うようなところに住めない可能性もあります。そんな場合に備えて家を買っておくと安心感がある、精神的に安定するということもあります。

また単身女性にとって、住居のセキュリティ面は重要なポイントです。単身女性が購入するのはマンションがほとんどかと思いますが、一般的には賃貸マンションよりも分譲マンションの方がセキュリティ面がしっかりしていることが多いものです。単身女性が住みたいマンションを探していたら、結果的に「マンションを買う」という選択に至ったケースは少なくありません。

【デメリット】

単身女性の場合、はじめは結婚する予定がなかったのが途中で変わるなど、ライフスタイルが変化することがよくあります。そうなった場合に、一人用の狭いマンションを購入していた場合などは売ったり、人に貸す必要が出てきます。

しかしいざ売ろうと思ってもなかなか売れなかったり、購入価格よりずっと低い価格で売らざるをえなかったり、という場合もよくあります。購入価格よりずっと低い価格で売り、多額のローンだけが残ってしまった…なんてことも起こりえます。賃貸物件に住んでいれば気軽に引っ越せますが、家を買ってしまうとそう簡単にはいかないのだということを、しっかり頭に入れておきましょう。

【家を買う方がいい?借りる方がいい?】

今後ライフスタイルが大きく変わる見込みがなく、収入も安定している女性が資産価値が高そうな物件(人気のエリア・駅から近いなど)を選ぶのであれば、買うメリットは大きいかもしれません。しかしまだライフスタイルが変わる可能性があり、家に特にこだわりがない女性であれば、買わずに賃貸のままで様子を見ておきましょう。

子どものいない夫婦(DINKS)が家を買う場合

【メリット】

都心部で夫婦ともにバリバリ働いている場合は、立地が良く資産価値の高い物件を購入する、というケースもよく見られます。
そういった場合、購入価格より高く売却できる、なんてこともあったりするものです。また好立地な場所に住むと通勤や日常生活に便利である、というメリットもあります。

【デメリット】

子どものいない夫婦が家を買った場合にデメリットが生じやすいのは、夫婦でローンを組んで購入し、その後離婚した場合です。

夫婦の共有名義で家を購入して、その後離婚することになり財産分与でもめるケースが少なからずあります。離婚が決まって家が購入価格より高く売れて利益がでれば、その利益を2人で折半すれば良いのですが、実際はそううまくいかないものです。家を売却できなければ、離婚しても2人ともローンをずっと支払い続けなければなりませんし、もし家を自分だけのものにしたいと思い、ペアローンを自分の名義に一本化したいと思っても、相手の同意が必要ですし、銀行の再審査が必要になり、必ずしも名義を一本化できるとは限りません。

また、どちらかが、病気やケガで働けなくなってしまったという場合には、ローンの返済が厳しくなってしまうこともあるでしょう。さらに、現在は子どもがいなくても、将来的に家族が増えて、住んでいる場所が狭くなってしまったという場合も、賃貸物件であればすぐに引っ越せますが、家を買ってしまっているとそう簡単にはいきません。

【家を買う方がいい?借りる方がいい?】

資産価値の高い家を買い、無理のないローン返済計画ができるようならば、不測の事態が起こった時などにも柔軟に対応でき、家を買うことで得られるメリットは大きいかもしれません。しかし資金に余裕がない、今後ライフスタイルが変わる可能性がある(子どもが生まれる、転職や異動など)場合は、あわてて家を買わない方が無難です。

子どもがいる夫婦が家を買う場合

【メリット①】団体信用生命保険に入っておくと、何かあった時に安心

団体信用生命保険(以下、団信)とは、住宅ローン返済中に契約者に万が一のことがあったときに、住宅ローン残高がゼロになる保険のことで、ローンを借り入れる際や借り換えをする際に契約が可能です。
子どもが成人するまでは、教育費などでいろいろお金がかかるものです。そんな時に家計を支える大黒柱が亡くなってしまったとしても、団信でローンがなくなる、というのは経済的にも精神的にも助かりますよね。

ただ夫婦で住宅ローンを契約する「ペアローン」の場合は、亡くなった側の住宅ローンの残債のみが返済され、残された側の住宅ローンの返済は変わらず続くので注意が必要です。

【メリット②】ネットワークを築きやすい・良質なコミュニティに入れる

マンションを買うと、そこで自分と同じようにお子さんがいる人と友達になったり、ご近所付き合いがしやすくなったり、地域のコミュニティができて心強い、ということがあります。また分譲マンションの場合、住民のコミュニティの質がある程度保たれていることが多く、そういったコミュニティに所属するメリットもあるようです。

【メリット③】住宅の作りがしっかりしているので安心

賃貸マンションと分譲マンションを比べた場合、一般的には分譲マンションの方が頑丈な作りであることが多いようです。また特に子どもが小さい場合などは、防音がちゃんとされているかというのは重要なポイントです。防音がきちんとされた家に暮らすことで、生活の質がぐっと上がります。

【デメリット①】家計が圧迫される

家を買うとなると多くの場合はローンを組みますが、そこでやはり問題となるのはローンが家計を圧迫する、ということです。今のところは毎月のローン返済が問題なくできているとしても、収入の状況が変わったり、病気で働けなくなってしまったりすると、ローンの返済が大きな負担となることがあります。ローンの返済で精いっぱいとなると、本来かけるべき教育費などもかけられなくなるかもしれません。

ただどんな人であっても、家を買うとそういったリスクはつきものです。ですので、貯蓄や頭金などある程度余裕のある状態で家を買う、月々のローン返済額が無理のないように設定する、といったことは必要です。

【デメリット②】ライフスタイルの変化に柔軟に対応できない

家を買った当初は子どもが1人だけで、その後子どもの人数が2人、3人と増え、住んでいるところが狭くなってしまったけど、買ったためにそう簡単には引っ越せない、子どもが進学した学校が遠くにあり、引っ越したいが引っ越せない、パートナーが転勤になったけど、家を買ったために帯同が難しいということもありますよね。そのような場合、「賃貸物件に住んでいればすぐに引っ越しできるのにな…」と思ってしまうこともあるようです。
買った家を売ることはできますが、賃貸物件から引っ越すのに比べると労力やお金がかかってしまうため、どうしてもハードルが上がります。

【家を買う方がいい?借りる方がいい?】

子どもが増える予定などなく、また仕事の都合などで引っ越す可能性もなく、地域にしっかり根付いて暮らしたい場合は家を購入するメリットは大きいかもしれません。しかし転勤が多い仕事に就いていたり、資金面で余裕がない場合は賃貸で様子を見ることをおすすめします。

家を買うのにベストなタイミングとは?


人それぞれ、家を買うのにベストなタイミングは異なります。しかし「家を買いたい」とずっと思っている人であれば、結婚した、子どもが生まれたなどライフプランがある程度固まってきた頃がおすすめです。

ただ子どもがいてもずっと賃貸物件に住んでいて、子どもが成人したら自分の好きなエリアに家を買う計画を立てているという人や、老後のために家をあえて買わず、貯めたお金は老人ホームの費用にあてるという人もいますので、家を買うことがベストな選択肢とは限りません。

2024年に家を買った方がいい?買わない方がいい?


家の購入にあたりやはり気になるのは、「いつが買い時なのか」「いつ買うのがお得か」ということでしょう。

現在都心部を中心に、不動産の価格は上昇傾向にありますし、マイナス金利政策が解除されたことで、今後金利が少しずつ上がっていくことも想定されます。また現在は住宅ローン減税制度がありますが、今後それもどうなっていくか分かりません。
物件の価格は今後このまま上がっていき、高いまま推移していく可能性もありますので、「価格が下がったら買おう」「もう少し待ってみよう」と思っている間に、どんどん価格が上がり続け、気付いたら家を買いたくても買えなくなってしまった、ということにもなりかねません。

また金利も今後上がっていくことが予想されるとはいえ、ひと昔前に比べればかなり低金利ですし、急激に金利が上がることはないと思われます。金利の上昇が不安なのであれば固定金利でローンを組むのもいいですし、現状では住宅ローン減税も利用できます。

ですので、頭金がすぐ用意できる、毎月のローン返済を問題なくできるなど資金的に余裕があり、「いつかは買いたい」という気持ちがあるのなら、早めに買っておくといいかもしれません。
また現在は会社勤めをしているけれど、今後独立や起業を検討している人などは、好条件でローンを組める今のうちに家を買っておくことをおすすめします。

家を買う上で気を付けたいこと


最後に、家を買う上で注意したいこと、頭に置いておきたいことについてお伝えします。くれぐれも、「家を買ったけど後悔…」なんてことにならないようにしましょう。

①できるだけ「資産価値が高い・下がりにくい」「人に貸しやすい」物件を選ぼう

家を買う場合は、できるだけ資産価値が下がりにくく、高値で売れそうな物件を選びましょう。また売らない場合でも、人気のエリアで駅に近いなどの好条件がそろっていて人に貸しやすいかどうかも、重要なポイントです。
購入にあたっては、自分が買おうとしている物件の相場はどれぐらいなのか、同じエリアや条件だと、どれぐらいで借りられるのか、ということを不動産屋さんに聞くなり自分で調べておくことをおすすめします。

②20代の若いうちは、賃貸物件に住むのが無難かも

若いうちは賃貸物件に住み、家の購入は慎重にした方がいいかもしれません。「理想の家が見つかったので、今すぐ買わないと後悔する」などといった理由で家を買うのも良いですが、20代ですとまだ貯金も十分にはなく、かなりの額のローンを借り、その返済に毎月苦しむことも考えられます。

それに20代のうちは単身でも既婚でも、ライフスタイルがこれから変わる可能性が高いものです。一生独身のつもりが結婚することになり、一人暮らし用のマンションには住めなくなってしまったり、ペアローンで家を買ったけど離婚して、その後誰も住んでいないマンションの返済に苦しむ、なんてこともありえます。

③家を買うより売る方がずっと大変。そのことを分かったうえで買おう

ライフスタイルの変化が激しい現代では、一生同じ家に住まず何度か引っ越ししたり、買った家を売って新たに家を買う、という人も珍しくはありません。そのようにフレキシブルに生きる上で、家を買ったことが足かせになっている場合は結構あるものです。

「何かあれば、家を売ればいいや」と安易な気持ちで家を買うかもしれませんが、家を買うより売る方がずっと大変なことです。それに買った金額よりずっと安い金額で売ることになる可能性もあるし、売ったところで多額のローンだけが残ってしまうこともあります。無事家が売れたとしても、売却にあたり多額の手数料を払うことにもなります。「周りがみんな家を買っているから」といったことに流されず、家を購入するかどうかは慎重に判断しましょう。

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