経営者・池ノ内佳苗 血糖値と食事で人を変える喜びを世界に

経営者・池ノ内佳苗 血糖値と食事で人を変える喜びを世界に

ダイエットカウンセラー、料理講師を経て、現在はデリカテッセンの経営や血糖コントロールのサービスなど事業の幅を広げている池ノ内佳苗さん。プレイヤーだった池ノ内さんが、本格的に経営者としての道を歩み始めた原点を伺いました。

【池ノ内佳苗プロフィール】
年齢:33歳/職業:株式会社LaViena代表取締役/家族構成:既婚(結婚10年目)
instagram @kanaeikenouchi

topicsデータをもとに健康と美容を手に入れるヘルステック事業

――池ノ内さんの会社ではどんな事業をされているのでしょう?

食の事業と、データを扱ったヘルスケアサービスであるヘルステックの事業をやっています。

――ヘルステック、初耳です。具体的にはどんなことができるんですか?

医療機器を使って血糖値を24時間測定することができます。今はそれと連動する自社のスマホアプリを開発していて、それを使えば白米を食べて血糖値が上がる、玄米だとあまり上がらない、というような数字が可視化できるようになるんですね。アプリ経由でデータをアップしてもらって、管理栄養士がアドバイスをするという仕組みになっています。

でも、それだけだと食生活が変わらないので食事業も並行してやっていて、アンテナショップとして銀座5丁目にGiデリというお店をオープンしました。今そのデリを全国に広めていきたくて、レトルトや冷凍など宅食のサービスに展開しようとしているところです。

Giデリで提供しているメニューの一部。GiデリはGI値(食後血糖値の上昇を示す指標)をコンセプトにした日本唯一のデリカテッセン。映えつつ、血糖値が上がりにくく栄養価が考えられた、美容と健康に良い食を提供しているそう。

――美容を気にする方に好まれそうですね。

血糖コントロールすることで糖化予防(※糖をとりすぎると体が糖化してシミ・シワなどの老化につながるそう)にもなりますし、ダイエットにも効果があります。健康系の食って、健康を取り立てて意識していない方から敬遠されがちなところがあるんです。味が薄そうとか、お腹いっぱいにならなさそうとか。Giデリも1年半前にお店をオープンした頃は意図が全然伝わらず、お客さんが来なくって。それで半年くらい前からシフトチェンジして、見映えもよくて美味しくて買って、気づいたら健康だったっていう逆の流れを目指しています。

実際、血糖値が急に上がって下がると眠くなるんですよね。今では法人さん向けの、眠くならないお弁当もウケていて。会議のお弁当や福利厚生の一環で、銀座中心に法人さんのお弁当としてもご利用いただいています。

――池ノ内さんはもともとダイエットカウンセラーをされていたとのことですが、こういったヘルステック関連の事業に力を入れ始めたのはいつ頃からなのでしょうか?

はじめて血糖値を可視化できるっていう技術に触れたのは5年前くらいで、そこからヘルステックの事業に力を入れ始めました。

――会社設立の決め手になったのは?

決め手というものは特になく、仲間が増えていったっていう感じですかね。今糖尿病の方は世界的に増えていて、患者さんで1,000万人、予備軍で1,000万人と言われています。でも、普段から気をつけられることっていっぱいあるんですよ。例えばサラダから食べるとか、食物繊維を多めにとるとか、玄米に変えるとか。それを病気になってから気付くんじゃなくて、20代、30代のうちからポジティブに取り入れてもらって、結果的に糖尿病の率を下げたいっていう思いが私にはあります。それに賛同してくれる方がまわりにたくさん増えてきて、会社として育ってきたという感じだったと思います。だから、あえて個人事業主を法人にしようと決意したタイミングは特になかったかなって。

 

turning point不安は解消しない、だが辞めない

自分の血糖値を知ってる人ってあまりいないんですよね。ただ、それって測ったことがないから知らないだけで、20代の方でも糖尿病レベルに食後の血糖値が上がっている方はいて。どうして測る文化がないんだろうって思います。

――測り方もわからないですし…血をとったりとかするんですか?

いいえ、私たちの会社では、アプリで食事の写真を撮ってもらって、それと腕につけたパッチみたいな医療機器が連動するようになっていて、解析してフィードバックを返してるっていう感じですね。血もとらないですし、オンラインで100%できます。

池ノ内さんの転機は二つ。「ダイエットカウンセラーの頃に、数字を見て体が変わるのを知ったこと」と「料理講師として料理を教えて、生徒さんが料理を作るようになったこと」。人が良い方向に変わっていく嬉しさをもっと広げていきたくてヘルステック事業に参入。

――起業するときに不安だったことは?

なんだろうな、うまくいくかどうか(笑)。

――それっていつ頃解消しました?

しないです(笑)。絶対ってないじゃないですか、だから不安はつきものだと思う。今は支払い管理も全部してるので、事業計画通りにいかなかったらどうしようって思うことはたまにありますし、不安は解消しないですね。

――日々その不安にはどうやって向き合っているんですか?

メンタルを強くするっていうことかな。その不安に勝てない人が、うまくいかなくなったときに辞めちゃったりするのかなって。周りの経営者さんも、続けているといつかうまくいくので、辞めないようにということは強く思っています。

――モチベーションってどうやって保ってるんでしょうか。

血圧計が広がったのって、オムロンさんが血圧計を広げようって思ったからなんですよね。それまでは血圧を測る文化なかったのが、高血圧だったら塩分ひかえようという意識が広まった。

それと同じように、みんなが自分の血糖値の動きを知っているっていう状態を作りたいっていうのが一番叶えたい世界観なので、モチベーションはなくならないです。下がることもありますけど、辞めたいほど下がるということはないです。逆に起業したいっていう目的で起業するのって、どうやってモチベーション保つんだろうなって思ったりします。私は今のことじゃなければ起業しないです。メンタルが保てない。

 

work style問題を前にしたときに経営者としての知識が身に付く

――20代、30代それぞれどんな働き方をしていましたか?

20代、30代という区切りではないんですけど、23歳から25歳くらいまではインプット期みたいな時期でした。管理栄養士として何ができるかいろんな方を見たり、料理学校に通い直したり、1年間専門学校に行ったりとか。

そのあとの25歳から28歳までがアウトプット期。料理講師とダイエットカウンセラーとして自分で動いてみるっていうことをしましたね。集客もSNS運用も自分でやって、お客さんを集めるっていうことをやってみました。27歳からは会社経営にシフトしていったので、自分のメンタルと人のマネジメントにも悩みつつ。

――一番大変だったのはどの時期ですか?

どの段階も大変ですね、それぞれ悩みの種類が違うっていう感じで。インプット期は何も身になっていないことが辛くて、アウトプット期もこれからどうすればいいかで悩んでいたし、27歳くらいまではもやもやしてました。

池ノ内さんのお仕事ルールは?「人への伝え方、LINEの返し方には気を付けています。今の事業は人がいてこそ成り立っているので、忙しいからといってぶっきらぼうに返したり、強い言葉を使わないように」

――その中で今に生きてる経験はどんな時期ですか?

実際に経営をし始めてから勉強したことが身についています。例えば従業員を雇うとして、その人たちがどういう思いで会社に所属するのかっていうのを経営者目線で見たことがなかった。細かいことでいうと、有給、残業、時給とか。そういう組織の作り方や労務なんかも手探りで毎日調べながらっていう感じです。私にとっては逆に、20代前半で読んでた経営の本はあまり役に立たなくて。

――なぜですか?

問題にぶつかったときこそ解決しなきゃいけないわけで、そのときが一番必死になんとかしなきゃというマインドになるじゃないですか。そういうマインドで勉強したほうが一回で身になりますよね。人が増えてきて、問題が次々に降りかかってきてからは、成長スピードが上がったなと思います。

 

life style誰もが自分の血糖値を知っている世界を叶えたい

――今お仕事は決まった時間で働いていますか?

ミーティングとかの時間は決まってますが、それ以外は自由…でもプライベートの時間、仕事がない時間は今はないです。

――それは物理的に?

物理的にないです(笑)。月曜から金曜まではミーティングも入るしGiデリの営業もあって、土日になるべく人と会わないようにしてデスクワークをするというふうにしてます。

――リラックスする時間ありますか…?

とるようにしてます(笑)。旦那も仕事が忙しい人なので、平日や土日の昼間に一緒にお出かけすることは一切なくて。ただ10年くらいずっと、土曜日の夜はデートって約束してて。なので土曜の夜はお休みして、おいしいものを食べてお酒飲んで、家で犬と過ごすのが一番のリラックスです。

土日の夜は犬2匹と旦那さんが、早い時間からソファで一緒に寝てるんですよ。地味なんですけど、それを見るのが一番幸せです。私の前で油断した姿を見せてくれているみたいなのが、家族だなって感じられて。

もし週に2日きっちり休めるとなったら何しますか?「釣り。すごい楽しいです。車の運転も好きなので、遠くまで車運転したりとか」

――池ノ内さんは、自分が食べるものも気を遣いますか? 食のルールってあります?

ルールあります。一番は我慢しないことです。私本当にお酒好きなんですよ。量も飲むので、ワイン2本とか全然飲めます。でもやっぱり、医学的にも体感的にもお酒が美容に良いことってないので。ただ好きなので、帳尻を合わすっていうことは気を付けてます。例えば週に2回休肝日を作るとか、休肝日は血糖コントロールはもちろん美容栄養素って言われる色の濃い野菜やたんぱく質を補充するっていうのは頑張っています。

――今後の目標はありますか?

さっきも言ったんですけど、世の中の人たちが、自分が何かを食べたときの血糖値の動きを知ることが一番ですね。それで何かに気を付けて、糖尿病の率が下がることです。

――なぜそんなに血糖値をなんとかしたいというふうに思うんですか?

ガンっていろんな原因がありますけど、糖尿病は食生活に気を付けることで予防できるんですよね。それを知らずに糖尿病になってる人がいるのがもったいないっていう。知ってたら病気にならないことって結構あるんですよね。なので、自分が知ってることを伝えたいし、実際に食も提供したいっていうのがすごい強いですね。

カウンセリングしてても、「血糖値上がるよ」って言葉で言っても実感がわかないので行動に変化が出なかったりするんですけど、数字で見て上がってることがわかると、行動が変わるんです。血糖コントロールは美容やダイエットはもちろん、仕事のパフォーマンスの向上にも、うつ病予防にもいいので。数字で見せることで人の行動が変わりやすいから、ここを目指したいっていうのがあります。

――最後に、日々大切にしている考え方を教えてください。

「思いやりを持つ、共感する」。これまでいろんな方に愛情をかけてもらったので。経営してから特に、見返り求めずにいろんなことを教えてくれたので、それを返したいです。愛情をかけてくれた方に対してもそうだし、会社のメンバーにもそうですね、その気持ちが強いです。

 

言われてみたらたしかに知らない自分の血糖値。起業のモチベーションも強い気持ちがあってこそだということが伝わってきました!

■記事で登場したお店はこちら

美と健康のデリカテッセンGi Deli
insta @gideli_official

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