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work style母親としての成長とともに事業もピボット
――では実際に起業しようと思い立って、どのように事業のアイディアを形にしたのでしょうか?
ハハカラとしてのミッションは創業時から変わっていないのですが、今の「OYA.NOTE」ができるまでにいくつかの事業を試し、ピボットして今の形になりました。
最初は、働きながらの出産・育児への労力を減らしたいと思い、出産準備の代行事業に着手し、ベビーカーや哺乳瓶の選定を代わりに行っていました。だた、出産準備こそ夫婦が一緒にやりたいと考える方が多く、また、出産準備の大変さより復職してから活躍できるかどうかのほうが心配に感じている人が多いということがわかりました。
――ハハカラの創業が2021年3月。ちょうどご自身の出産や育児のスタートと重なりますね。
そうですね。自分自身の妊娠の経験を通して感じたペインが、出産準備代行業の原点になっています。当時はほかの仕事もしていたのですが、取り組みながら「自分がやるべきことはサラリーマンではなく、女性の負担を少しでも軽減することだ」という使命感を感じて、子どもが1歳になるタイミングで会社を辞めて起業しました。ですので、私自身も子どもの母親として成長しながら、それに応じて事業に対する解像度も高まっています。
――では、今の「OYA.NOTE」の事業にピボットしたのはいつ頃でしょうか?
2023年頃です。最初の一年間は一般ユーザーへの訴求がうまくできず、課題を感じている人に届けることが難しかったのですが、今はtoBにシフトし、研修とセットにすることで導入メリットを感じていただいています。夫婦の家事育児分担比率が本当の意味での働きやすさや活躍しやすさの指標になると考えていて、既に女性社員の働きやすさを改善したいと考えている企業さんからのお問い合わせをいただけるようになってきています。

企業向けに行うマインドセットの研修は、パートナーが社外であっても夫婦揃って参加できるそう。実践的な家事育児分担の方法から、育児へのコミット度合いによる愛情曲線の変化など、視聴が負担にならない10分間×3本。
――片田さんの仕事の原点になる経験を挙げるとしたら、どんなことが思い浮かびますか?
これまでは、努力したらその分報われると思っていたのですが、パートナーとの結婚生活や子育ては、自分の努力だけじゃどうにもならないと感じたことです。きっと私以外にも同じようなところでつまずいている30代の女性がいるんじゃないかと思い、研修やツールを通して、少しでも改善できればいいなと思っています。
――片田さん自身はそのようなつまずきにどう対処したのですか?
我が家も最初は夫とうまく分担できず、「このストレスを抱えるくらいなら一人のほうが良い」と何度も思いました。でもやっぱりコミュニケーションをとるしか相手に気付いてもらう方法はないと一念発起し、その方法を失敗しながら試していきました。その結果、タスクごとにこまめに感謝を伝えられるのが一番負担がない、文章をいちいち書くのではなくスタンプだけでコミュニケーションがとれると苦じゃないなどの気付きを得て、「OYA.NOTE」ができるきっかけになりました。
今は自分たちの家庭でも「OYA.NOTE」を取り入れて、夫婦で顔を合わせるタイミングがなくてもコミュニケーションをとれるようにしています。そのおかげで夫婦の時間が増えて、パートナーへの理解が深まるのも実感しています。最近は、二人で子どもを早く寝かしつけて、自分たちの時間でテレビやドラマを楽しむことを共通の目標にし、自然と分担できるようになってきました。