副業を活用して自分らしい働き方を実現した女性をピックアップ。今回は、看護師として働く傍ら、副業として聴覚障害者のためのメタバースコミュニティの運営にも取り組む高野恵利那さんに話を伺いました。
【高野恵利那さんプロフィール】
年齢:27歳/本業:看護師/副業:メタバースコミュニティ「みみトモ。ランド」運営
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interview社会で孤立しがちな聴覚障害者を、当事者としてサポート
――これまでの経歴と、現在の働き方について教えてください。
2019年に看護師になり、大学病院のGCU(新生児回復室)で、先天性疾患などを持つ赤ちゃんの看護ケアを経験しました。その病院には3年ほど勤務したのですが、その間に「聴覚障害者が抱える精神的な課題」に関心を持つようになり、2022年から、山梨県にある精神科の峡西病院で勤務しています。なお現在は、症状の変化が激しい急性期病棟を担当しています。
また副業として、2023年に設立した聴覚障害者のためのメタバースコミュニティ「みみトモ。ランド」を運営しています。
――「聴覚障害者が抱える精神的な課題」とは、どんなことですか?
一番の大きな課題は、「コミュニケーションの壁」による孤独感や疎外感です。日常で聞き取りが難しい場面が多いと、会話に入りづらかったり、誤解が生じやすかったりします。その結果、人間関係を築くのが難しくなり、自分の居場所を感じにくくなりがちです。
また、周囲の人が聴覚障害に対する理解が十分でない場合、「聞こえないのに気づかれない」ということがよく起こります。
さらに、聴覚障害者は社会的な誤解や偏見、職場でのコミュニケーションエラーが積み重なることで、精神的な負担が増しやすいために、うつ病の発症リスクが高いとも言われています。
――副業として運営する「みみトモ。ランド」の活動内容について教えてください。
メタバース空間(インターネット上の仮想空間)を利用したピアカウンセリングやイベント運営、聴覚障害者のための情報発信を行っています。具体的には、以下のような内容です。
【主な活動内容】
ピアカウンセリング:メタバース空間で、聴覚障害者同士が日常の悩みや思いを共有する場を提供する
医療支援イベント:医師や補聴器専門家を招いての講演会や、人工内耳の専門医紹介などを行う
署名活動や寄付事業:聴覚障害に関する研究の促進や、補聴器の調整支援などを目指す
現在、オンラインでの活動が中心ですが、リアルイベントの開催も少しずつ増やしています。
――「みみトモ。ランド」を立ち上げた背景について教えてください。
私自身、5歳で両耳中等度難聴を患いました。これが原因で小学校時代は会話に入りづらく、友人を作ることが難しい日々を過ごしましたし、中学ではいじめを経験しました。
そのような背景から、「自分と同じように困難を抱えている人たちを助けたい」という思いが芽生え、看護師になったんです。
しかし実際に看護師として働いてみると、聴覚障害者への支援が十分に行き届いていない現実を目の当たりにしたんですね。特に、障害者手帳を取得できない軽度・中等度難聴者は、法的な支援を受けることが難しく、孤独や経済的不安を抱えながら生活している人が多いことを知りました。
そこで「聴覚障害を精神面・経済面でサポートしたい」と思い、「みみトモ。ランド」を立ち上げることにしました。
interview立ち上げには、SNSやビジネスマッチングアプリを活用
――「みみトモ。ランド」を立ち上げるにあたり、どんなことから着手しましたか?
まず、「障害者手帳がない障害者が安定した収入を得られる仕組みを作る」という最終目標を立てることから始め、その実現に向けてすべきことについて整理しました。
そして、SNSやビジネスマッチングアプリを活用して人脈を広げ、活動に役立つ知識やスキルを持った人たちと繋がり、情報収集をしました。また、メタバースの仕組みについても学び、全国どこにいても参加できるコミュニティづくりを目指しました。
――立ち上げに必要な資金は、どのように調達しましたか?
自分の収入を元手に始めました。NPO法人化の手続きやイベントの費用など、初期の経費は看護師として働く中で貯めたお金を使いましたが、最初は自己投資だと考え、少ないリソースの中でもできることを進めました。
現在は、寄付やイベント収益を活用しつつ、助成金の申請や企業との協力を進めています。限られた予算の中でも、工夫しながら活動を広げていきたいですね。
――現在の働き方について教えてください。
本業の看護師はシフト勤務で、完全週休2日制です。休みは平日のときも土日のときもありますが、このイレギュラーな働き方が副業をする上では役立っていますね。
ちなみに副業は本業から帰宅した後や、休みの日に取り組んでいます。例えばピアカウンセリングの場合、22時半~23時頃になってやっと参加者がメタバース上に集まってくる、という感じなので、それぐらいの時間にやることが多いです。
interview副業で、自己肯定感やコミュニケーション力が上がった
――副業を始めて良かったこと、大変だったことは何ですか?
良かったことは、自己肯定感が大きく上がったことですね。以前は、聞き間違いやコミュニケーションの齟齬を気にして自分を責めることが多かったのですが、副業を通じて「自分にもできることがある」と気づけたことが大きいです。
一方、大変だったのは人脈作りです。初めのうちは、看護師という狭いコミュニティからどう広げていくかがわからず、試行錯誤しました。また、目に見える成果が出るまで時間がかかるため、モチベーションを保つのが難しい時期もありました。
――副業での経験が本業に役立っている、と感じることはありますか?
副業での活動を通じて、自分の考えを整理し、人に伝えるスキルが向上したのですが、このスキルが、本業で患者さんと向き合う際に役立っていますね。短時間で的確に返答する力が身についたことで、患者さんへの対応もスムーズになりました。
――一方、本業での経験が副業に役立っている、と感じることもあれば教えてください。
聴覚障害者の精神的なケアを行う際に、精神科の看護師として学んだ「どのような言葉を選ぶべきか」「相手の気持ちに配慮した対応」といったことや傾聴力が、自然と役立っています。
また、看護師としての医療知識や経験があることで、コミュニティの参加者や協力者からの信頼を得やすいですし、そういった知識や経験をもとにしたアドバイスもできるのは大きなメリットだと感じています。
interview副業を「なぜやりたいのか」明確にするのが大事
――今後の目標や展望について教えてください。
副業に関しては、「障害者手帳がない障害者が安定した収入を得られる仕組みを作る」という最終目標を実現するために、リアルイベントを増やして、聴覚障害の当事者同士が交流できる場をもっとたくさん作り、さらに地域の医療サービスにつなげられるよう動いていきたいと考えています。
もっと収益を増やし「みみトモ。ランド」の規模を大きくしたい、という思いもあります。
また本業については、今後も現在勤務する峡西病院と良好な関係を保っていきたいですし、病院がより発展するための取り組みもサポートしていきたいですね。
その一環としてつい最近、精神科医療を良くするための企画書を提案しましたが、そんな感じでこれからも様々な形で病院に貢献していきたいと思っています。
――最後に、副業に興味がある女性にアドバイスをお願いします。
副業を始めるなら「なぜそれをやりたいのか」を明確にすることが大切です。明確な目的がないと、途中でモチベーションを失いやすいですし、周囲からの反対にも負けてしまうかもしれません。自分の意思をしっかり持ち、継続することで道が開けると思いますよ。
毎日忙しくも充実した日々を送る高野さん。副業を通じて自己肯定感を取り戻し、いきいきと暮らす姿は、似たような悩みを抱える人にとっても大きな励みになるはず。副業に興味がある方は、この記事を参考に、ぜひできることから始めてみてくださいね♪
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