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turning point出産を機に働き方改革
――ご自身の基礎を作った経験を挙げるとしたら、どんな経験ですか?
私は金融業界では最初に3年間ブルームバーグ・エル・ピー(以下、ブルームバーグ)で働き、その後5年間ウエリントンで働いたのですが、どちらの経験も自分の基礎になっていると思っています。ブルームバーグは金融情報メディアなので、スピードが命。業務スピードだけではなく、組織や事業が変わっていくスピードも速く、スピードが価値なんだということはすごく感じました。
ブルームバーグではお客様のサポートや営業の仕事をしていましたが、そこでお客様とのコミュニケーションの基礎を学びました。大学院では一人で黙々と研究する環境で、人と話すのがそれほど得意ではなかったのですが、この時期にお客様のニーズをしっかり聞いてそれに答えるということを叩き込まれましたね。
――ウエリントンではいかがでしたか?
企業文化や職業倫理が素晴らしい会社で、そのような環境で働けたことがよかったと思っています。他者の成功に貢献することが良しとされる、真の協働の文化でした。役職が高い人ほど謙虚で、CEOが「After you(お先にどうぞ)」とエレベーターのドアを開けてくれるようなこともありました。このような考え方が自分に根付いているので、今の会社でも従業員とフレンドリーに話して、忖度せず言いたいことを言ってもらえる関係性が築けていると思います。
――転機になった出来事をひとつ挙げるとしたら、どんな出来事でしょうか?
やはり出産ですね。東洋食品に入って一年後に出産したのですが、仕事に使える時間が大幅に減ってしまい、自分の働き方を見直さなければならなくなりました。もともとは細かいところまで自分でやらなければ気が済まないところがあったのですが、そうも言っていられないのでチームに任せるように。そして自分が実現させたいことや会社の今後の方針をきちんと伝えることに時間をかけました。そうすると今度はチームから、「専務(=荻久保さん)はこんなことがやりたいのだろう」と自発的に動いてくれるようになりました。
また、育児を経験したことで、細かいことにこだわらなくなりましたね。金融は1円単位でも間違えてはいけない業界だったので、細部に気を遣うのを徹底していました。ですが、これと同じやり方を部下に求めてしまうと関係性がうまくいかないので、これを出産と育児を機に変えていきました。自分の理想のやり方と多少違っていたとしても、お客様の迷惑になったり致命的なミスでなければいいと思えるように。
――荻久保さんの場合、長男が生まれたあと、長女と次女の双子が生まれていますよね。子どもが一人から三人に増えたときには、何か変化はありましたか?
仕事を断捨離しましたね。考えることと話すことだけをして、書類作りのような作業は全て人に任せることにしました。最近は子どもも大きくなってきて、日帰りの出張程度なら行けるようになりました。