巷でよく耳にする「ハラスメント」という言葉ですが、このハラスメントは意外と身近に潜んでいるもの。そして、ハラスメントが起こりやすい場所の代表的なものとして挙げられるのが、職場です。
この記事では働く女性を対象に、さまざまなハラスメントの種類やその内容、ハラスメントにあった際の対処法、自分がハラスメントをしていないかチェックする方法などについて解説します。自分自身や周囲の人々を守るために、ハラスメントについての理解を深めましょう。
目次 [閉じる]
- 1. ハラスメントの種類と内容について
- ①セクシャルハラスメント(セクハラ)
- ②パワーハラスメント(パワハラ)
- ③モラルハラスメント(モラハラ)
- ④ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)
- ⑤リモートハラスメント(リモハラ)
- ⑥マタニティハラスメント(マタハラ)
- ⑦テクノロジーハラスメント(テクハラ)
- ⑧スモークハラスメント(スモハラ)
- 2. 今増えているリモートハラスメントの具体例
- ケース①オンライン会議の画面に映った部屋を指摘
- ケース②業務上の合理性がないのにかかわらず、オンラインで何度も呼び出す
- 3. 職場でハラスメント被害にあった時の適切な対応とは?
- 自分がハラスメントの被害者となった場合
- ①「嫌である」「不快である」という気持ちを相手に伝える
- ②ハラスメントの証拠を集める
- ③ハラスメント窓口に相談する
- ④自分の心身のケアをする
- 同僚がハラスメント被害を受けていることに気付いた場合
- ①被害者に寄り添う
- ②ハラスメント証拠を収集する手伝いをする
- ③被害者の代わりに上司や人事部に報告する
- ④相談機関を紹介する
- 4. あなたは大丈夫?誰でもハラスメントの加害者になりうるという事実
- 「自分がハラスメント行為をしていないか」どうかのチェック項目
- ①相手のプライバシーを尊重しているか
- ②相手の意見を尊重しているか
- ③不適切な言動をしていないか
- ④適切なコミュニケーションを取っているか
- ⑤権力を乱用していないか
- ⑥他人を無視、孤立させていないか
- ハラスメントの加害者にならないために気を付けたいこと
- ①オープンなコミュニケーションを心がける
- ②相手のプライバシーを尊重する
- ③公私の区別をはっきりさせる
- ④ハラスメントに関する教育を受ける
- 5. まとめ
ハラスメントの種類と内容について
ハラスメントにはさまざまな種類がありますが、ここでは職場でよくみられるハラスメントについて8つ紹介します。
①セクシャルハラスメント(セクハラ)
セクシュアルハラスメントとは、性的な言動によって相手を不快にさせる行為を指します。
例えば…
・性的な冗談やコメント
・性的な関心をしめしたり、行動を強要する
・不必要な身体の接触やスキンシップ
といったことがあります。
なお職場におけるセクシャルハラスメントは、同性に対するものも含まれます。
②パワーハラスメント(パワハラ)
パワーハラスメントとは、職場において権力を持つ立場の者が、その権力を乱用して他人を攻撃したり嫌がらせをすることを指します。
例えば…
・過度な業務量の強要や不合理な目標設定
・公然とした叱責や侮辱
・無視や孤立化
・個人攻撃や人格否定
といったことがあります。
③モラルハラスメント(モラハラ)
モラルハラスメントとは、精神的な嫌がらせや暴力を指し、相手の心理的な状態に悪影響を及ぼす行為です。
例えば…
・繰り返しの批判や侮辱
・無視や冷遇
・誹謗中傷やデマの流布
・他人を巻き込んだ攻撃
といったことがあります。
④ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)
ジェンダーハラスメントとは、性別や性自認に基づく差別や嫌がらせのことです。
例えば…
・性別に基づく不当な扱い
・性役割に関するステレオタイプの押し付け
・性別を理由とした昇進や給与の差別
・性自認に関する嫌がらせ
といったことがあります。
⑤リモートハラスメント(リモハラ)
リモートハラスメントとは、テレワークやリモートワークの環境で発生する嫌がらせ行為のことです。
例えば…
・プライベートな時間内での業務連絡の強要
・オンライン会議での不適切な発言や態度
・リモート環境での無視や孤立化
・監視ソフトウェアの過度な使用
といったことがあります。
⑥マタニティハラスメント(マタハラ)
マタニティハラスメントとは、妊娠・出産、育児に関連する精神的・肉体的な嫌がらせや、不利益な取り扱いを指します。
例えば…
・妊娠や出産を理由にした不当な業務配置転換や解雇
・育児休暇や時短勤務を申請することへの嫌がらせ
・妊娠や出産に関する否定的なコメントや態度
・出産後の職場復帰に対する嫌がらせや差別
といったことがあります。
⑦テクノロジーハラスメント(テクハラ)
テクノロジーハラスメントとは、ITやテクノロジーに疎い人への嫌がらせをすることを指します。
例えば…
・ITスキルの低さを嘲笑する
・ハイテク機器の操作を押し付ける
・技術的な問題で困っている人を助けない
といったことがあります。
⑧スモークハラスメント(スモハラ)
スモークハラスメントとは、副流煙を浴びせるなど喫煙に関する嫌がらせを指します。
例えば…
・禁煙エリアでの喫煙
・他人に副流煙を吸わせる
・喫煙を強要する
といったことがあります。
今増えているリモートハラスメントの具体例
コロナ禍をきっかけにリモート勤務が可能な会社が増えており、自宅で仕事をする人は珍しくなくなりました。しかしその一方で、リモート勤務によるハラスメントも急増しているようです。では具体的にはどんなリモートハラスメントがあるのか、実際のケースをみてみましょう。
ケース①オンライン会議の画面に映った部屋を指摘
自宅で仕事をしていて、オンライン会議で自分の部屋の背景が映りこむこともありますよね。そんなとき、「部屋が可愛いね」「可愛いベッドだね」というプライバシーに関わる発言をしたら、言われた側が不快に思えばセクシャルハラスメントになることがあります。
オンラインで雑談などすることもあると思いますが、そんなときふと何気なく発した言葉も、相手の受け取り方次第ではハラスメントになることもあるため、注意したいものです。
ケース②業務上の合理性がないのにかかわらず、オンラインで何度も呼び出す
リモート勤務だと、「ちゃんと仕事をしているのか」不安になった上司が、しょっちゅうオンラインで部下を呼び出す、ということもあるかもしれません。しかし頻度や理由などにもよりますが、この行為もパワーハラスメントになる可能性があります。
自分がハラスメントの加害者になるのを防ぐという意味でも、オンラインであってもある程度「公私の区別をする」ことは必要である、と頭にいれておきましょう。
職場でハラスメント被害にあった時の適切な対応とは?
では、職場でハラスメントに遭遇した場合、どのような対応をすればいいのでしょうか。ここからは、自分がハラスメントの被害者となった場合と、同僚がハラスメントを受けているのに気付いた場合について、それぞれ適切な対応法を解説します。
自分がハラスメントの被害者となった場合
①「嫌である」「不快である」という気持ちを相手に伝える
ハラスメントを受けたら不快ですし、傷つきますよね。そんなときこそはっきりと「嫌である」という気持ちを伝えましょう。場合によっては相手は悪気がなくハラスメントをし、ハラスメントをされた側が傷ついていることにすら気付いていない場合もあります。黙って我慢することで、事態をさらに悪化させてしまうこともあるのです。
②ハラスメントの証拠を集める
メールやチャットツールのメッセージの保存、発言の録音など、ハラスメントの証拠をできるだけ集めましょう。具体的な証拠があることで、後の対処がしやすくなります。
③ハラスメント窓口に相談する
ハラスメントは個人の問題ではなく、会社が対策を義務付けられていますので、迷うことなくハラスメント窓口に相談しましょう。信頼できる上司や、労働組合に相談するという方法もあります。社内に相談できる相手がいない時は、都道府県労働局などの外部の機関に相談してもいいでしょう。セクハラやマタハラは、裁判などになった際には行為者が「やっていない証拠」を提出する必要があるほど、被害者にとって優位になっています。
④自分の心身のケアをする
ハラスメントは大きなストレスとなります。必要に応じて心理カウンセラーなどの専門家に相談し、自分の心身の健康を守ることが大切です。
同僚がハラスメント被害を受けていることに気付いた場合
①被害者に寄り添う
被害者に対して、話を聞いたり、サポートを提供したりすることで寄り添いましょう。被害者が孤立しないようにすることが重要です。
②ハラスメント証拠を収集する手伝いをする
可能であれば、ハラスメントの証拠を集める手伝いをしましょう。証拠があれば、後々の対応がスムーズになります。例えば、ハラスメントの現場を目撃した場合には、その状況を詳細に記録しておきましょう。また、被害者が受け取ったメールやチャットツールのメッセージのスクリーンショットを保管するように促しましょう。
③被害者の代わりに上司や人事部に報告する
被害者がハラスメント被害の報告をためらっている場合、代わりに上司や人事部に報告することを検討しましょう。そして報告する際は、できるだけ具体的な事実や証拠をもとに状況を説明してください。これにより、上司や人事部が迅速かつ適切に対応できるようになります。
④相談機関を紹介する
被害者に対して外部の相談機関を紹介し、適切なサポートを受けられるようにしてあげましょう。例えば、労働組合や専門の相談窓口を紹介する、といったことなどです。また必要に応じて、メンタルのサポートのためカウンセラーなどを紹介するのもいいでしょう。
あなたは大丈夫?誰でもハラスメントの加害者になりうるという事実
「〇〇ハラスメント」という言葉を聞いて、「自分には関係ない」と思う方もいるかもしれません。しかし実は誰でもハラスメントの被害者となるだけではなく、加害者にもなるリスクもあるのです。
そこでここからは、ハラスメントの加害者になるのを防ぐために、確認しておきたいことをお伝えします。
「自分がハラスメント行為をしていないか」どうかのチェック項目
まずは、「自分自身がハラスメント行為をしていないか」どうかのチェックリストを挙げてみます。当てはまることがないかチェックしてみてください。
①相手のプライバシーを尊重しているか
相手の個人情報やプライバシーに関する話題を無理に聞き出したり、他人に漏らしたりしていないか確認しましょう。例えば、同僚の住所や家族構成、恋愛関係についてしつこく尋ねていないか、聞いた内容を他の同僚に話したりしていないか、といったことなどです。
②相手の意見を尊重しているか
相手の意見や考えを尊重し、自分の意見を一方的に押し付けていないか確認しましょう。例えば、会議中に相手が発言した意見を無視していないか、「あなたの考えは間違っている」と一方的に否定していないか、といったことなどです。
③不適切な言動をしていないか
性的な冗談やコメント、差別的な発言など、不適切な言動をしていないか確認しましょう。例えば、同僚の体型や服装についてセクシャルなコメントをしていないか、出身地や性別に対して侮蔑的な発言をしていないか、といったことなどです。
④適切なコミュニケーションを取っているか
相手とのコミュニケーションが円滑で、相手を尊重した対応をしているか確認しましょう。例えば、相手の意見や感情に対して適切なリアクションを取っているか、相手が話しやすい環境を作ろうとしているかどうか、といったことなどです。
⑤権力を乱用していないか
職場での立場や権力を利用して、他人に対して不当な扱いをしていないか確認しましょう。例えば、上司である立場を利用して部下に対して個人的な頼み事を強要していないか、昇進や評価を盾にして圧力をかける行為をしていないか、といったことです。
⑥他人を無視、孤立させていないか
他人を無視したり、孤立させたりする行為をしていないか確認しましょう。例えば、特定の同僚をランチや会議に意図的に誘わない、挨拶を返さないなどの悪意のある行為をしていないか、といったことです。
ハラスメントの加害者にならないために気を付けたいこと
ハラスメント行為をする側に悪意がない場合でも、受け取る側が不快だと感じるとアウトなのが、ハラスメントの難しいところです。では加害者にならないためには、どういったことに気を付ければいいのでしょうか。ここから具体例とともに紹介します。
①オープンなコミュニケーションを心がける
職場でのコミュニケーションを積極的に行い、相手の意見や感情を尊重するようにしましょう。オープンなコミュニケーションを通じて、信頼関係を築けます。
具体的には…
・チームミーティングで各メンバーに意見を求める際、発言しやすい環境を作るために「どう思う?」と、頻繁に質問する。
・日常的な会話の中で、相手の話に対して適切なリアクションを取り、共感を示す。
・プロジェクトの進捗や問題点について、定期的に話し合いの場を設けることで、情報共有を徹底する。
といったことに気を付ける必要があります。
②相手のプライバシーを尊重する
相手のプライバシーに過度に干渉しないよう注意しましょう。個人情報の扱いも、慎重に行う必要があります。
具体的には…
・同僚の住所や家族構成、恋愛関係について個人的な興味で聞かない。
・同僚のプライベートな情報を知った場合でも、他の同僚に話さない。
・誕生日などの個人情報を聞いたとしても、本人の許可を得てから共有する。
といったことに気を付ける必要があります。
③公私の区別をはっきりさせる
職場での関係は公私混同せず、公の部分にのみ関わる意識を持つようにしましょう。職場のルールを守り、仕事に集中することが大事です。
具体的には…
・同僚とプライベートな関係にあっても、職場ではあくまで仕事に関連する話題に集中する。
・私的な感情で仕事上の判断をしないように心掛ける。
・職場のルールに従って、公正に対応する。
といったことに気を付ける必要があります。
④ハラスメントに関する教育を受ける
可能であれば、ハラスメント防止に関するトレーニングやセミナーに参加してみましょう。勝手に思い込んでいたことが間違っていたということもありますし、ハラスメントに関する新しい情報が得られるかもしれません。
まとめ
職場でのハラスメントは、被害者に深刻な影響を与えるだけでなく、職場全体の雰囲気や生産性にも悪影響を及ぼします。
自分がハラスメントの被害者にならないためには、ハラスメントの基本的な知識を身に付ける必要があります。また自分自身の行動を振り返り、無意識のうちに誰かを傷つけていないかも気を付けましょう。誰もがハラスメントの被害者にも加害者にもならないよう、安心して働ける職場を作っていきたいものですね。
※参照記事
https://woman.nikkei.com/atcl/aria/feature/19/022400122/030300003/
https://woman.nikkei.com/atcl/aria/feature/19/022400122/030300002/
https://woman.nikkei.com/atcl/doors/column/19/092400121/030400007/
https://woman.nikkei.com/atcl/aria/feature/19/022400122/022800001/